『前者の戯言』 ラグビーシリーズ⑪
 坂本英人 (経済 3年次)
クールに決める赤紺戦士 「AYATO!」

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凄まじい勢いで走り抜けた。わき目も振らず、ゴールラインだけを見て。湧き上がる声援を背に駆けていく。

WTB⑭坂本英人(3年 御所実)が無人のフィールドを一直線。ひたすら80mを全力疾走。相手選手は誰も追いつけない。紫紺を置き去りにした「独り舞台」だった。

観衆5000人の視線を集め、想いを背負った決死のダイブ。レフリーが笛を吹き右手を高々と上げた瞬間、クールな男が吠えた。
その雄叫びが次のステージである秩父宮までも届くように。

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勝敗を分けた独走シーン。尋ねてみると謙虚に語る。「運が良かったのもある。少ないチャンスを掴めた」。50m5秒9の快速を生かし、赤紺を歴史的勝利に導く。

逆転の「キッカケ」を作ったのは、LO④伊藤鐘平の渾身タックル。坂本英人は、そのことも忘れていない。

ボールを拾い上げた瞬間、スタンドは総立ち。湯気が沸くほどの熱気に満ち溢れる。
だが、クールな男は至って冷静だった。「取られたらダメなんで」。右手で拾いあげた楕円球を走りながら左手に持ち変えたのだ。
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あの瞬間をHO②中川将弥(3年 御所実)が『証言』する。「拾ったとき『あ、行くな』と思いました。何回も見てきたので。あいつ、拾ってから速いんですよね」と、高校時代からの戦友がにこやかに語る。
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京産大を選んだ理由はシンプルだ。「1番最初に声をかけてもらったから」。『報恩謝徳』の心を持ち、受けた恩を忘れない。口数こそ多くないが義理人情に厚い男なのだ。

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入学してすぐにAチームに合流。1年秋の大体大戦では4トライを奪うなど鮮烈デビューを果たす。

2年生でもWTB(ウイング)の座を離さない。3年となった今春には関西学生代表に選出され、全国に存在感をアピール。
そして今秋には、⑪濱田と⑭坂本で「駆け抜ける男前」を結成する。
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WTBはアタック面のイメージが強いが、坂本はこう語る。
「京産大は相手をゲインさせないディフェンスが売り。さらにチームワークを良くして、次に臨みたい」。

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『メイジ撃破』から4日が経つ。もう余韻には浸っていない。大学選手権〈準々決勝〉の東海大戦に向けて意気込んだ。
「低いタックルで当たる。勝つチャンスはあると思うので、そのときは走り抜けたい」。そして続ける。「自分たちの120%力を出す。ディフェンスで前に出て、ロースコアで。1点でもいいので多く取って勝つ」。
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クールに決める『AYATO』が赤紺ウェーブを秩父宮スタンドにも生み出す。