『前者の戯言』   ラグビーシリーズ②
松井匠(経営 3年次)
21年前に託された願い「匠の名を胸に」

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「何か一つのことを、突き詰めていけるように」。
生まれたときに込められた想いは、快速トライゲッターに届いている。

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松井匠(3年 東海大仰星)は、大学選手権でキーマンとなりうる存在だ。

その快足はセブンズ大会で披露されスタジアムDJから「ランボルギーニ」と呼ばれた時期もあった。7人制ラグビーを起点に存在感をアピール。15人制でも出場機会を勝ち取ってきた。

長野・菅平での夏合宿を終え、京都で久しぶりにユニフォーム姿を見ると、一回り身体が大きくなった印象だ。そのことについて尋ねてみると「(昨秋のシーズンで)タックルで当たり負けていた気がしたので6㎏増やしましたよ。今は82㎏です」。

容姿と数字が比例している。確かに、以前よりも上半身が大きくなり、しっかりとしてきた。自身の課題をきっちり理解し、調整できた。

2016年シーズンまで「増量」を忘れずにきた。もう、タックルで当たり負けはしたくない。

自身に課した「宿題」の成果が目に見えたシーンがある。
11月20日の近畿大戦。共に3勝2敗。この試合に勝てばチームは更なるステージに進める。

メンバー表に目を通すと、ここまでトライを量産していたWTB濱田将暉(2年 京都成章)の名前が消えていた。どうやら、前試合で怪我を発症。治療に専念している。代役「11」には俊足で相手をかき回すWTB松井匠が入った。代役と書いたが、その能力に遜色はない。

大学選手権を懸けた大一番で、「匠の技」が光る。

前半18分、相手ボールでのスクラムをFWが猛プッシュ。ターンオーバーを奪う。9貴島から10高原とボールを展開。10高原が思い切ってさらに右に展開。受け取った11松井匠が敵陣22メートル付近より、ボールを持ちだし、大外での勝負に出た。

WTBらしいライン際での攻防。相手は3枚も選手がいたが、6㎏増やし鍛えぬいた身体が功を奏する。ユニフォームを掴まれながらも強引に持って行った。タックルを受けるが、そこはもうトライゾーン。捕まりながらも、右隅に決め切った。

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試合は『京産大64-18近畿大』の完勝。大学選手権への切符を勝ち取る。試合後、一呼吸着いた松井はこう語る。

「先発出場で気合十分だった。WTBとして、トライ、アシスト、ゲインできていたので、次戦以降もチームを勢いづけられるようなプレーをしたい」

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シンデレラボーイの魔法は続くだろう。
50m5.9秒という、誰も寄せ付けない武器を備えて。

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21年前に授けられた想いを背負い、フィールドを颯爽と走り抜ける。
「匠の名を胸に」。