(ラグビー部)10月16日@宝ヶ池球技場
関西Aリーグ 第3節 対立命館大
試合結果「京産大44-26立命館」

熱い男たちが帰ってきた。全てを捨て、戻ってきた。
本当に大切なモノを取り返すため、ひたむきに楕円を追いかける。
23人の赤紺ジャージ。神山のプライドをもった戦士たちだ。

開幕試合から連敗スタートとなった京産大が、ついに意地を見せた。
ここまで、同志社に31―33、天理大に24―40と食らいついているが、惜しくも白星を掴めておらず、大学選手権出場へ苦しい展開に。
関西リーグ3戦目となる今試合。対戦相手は立命館大。
2011年以来、勝ち星のない、苦手としているチームであった。
負ければ大学選手権出場に黄色信号が灯る、この試合。
意地のぶつかり合う京都北山の地で、鳴り響いた試合開始の笛。
その80分後には赤紺が吠えた。

秋を感じさせる晴天、スポーツ日和となった。
この日、宝ヶ池球技場の観衆は3226人。
入場料は当日券で高校生以上1500円。
アマチュア競技の中では、決して安いとは言えないチケット代だ。
だけども1度試合を見れば、仕事の休みを取ってでも足を運ぶ理由を教えてくれる。
勝っても負けても、一ファンとして結果を受け止め、再び球技場へ。

負けた試合後には「まだ次あるで!よくやった!次や、次や!」と、熱い声がスタンドから聞こえてくる。そうやって応援してくれる人がたくさんいる。
それが大学ラグビーの原点であり、観戦する醍醐味だ。

いつの日も背中を押すのは声援。
ゲームの流れは意外にも「音」で変わることがある。
「押ーせ!押ーせ!の掛け声、森田いけー!高原ナイスキックー!坂本そこやー!濱田はしれー!下良頼むでー!松本ナイスタックルー! しばちゃん、ナカガワ、ほっそのっ!!」
誰も太鼓は叩かないし、ラッパなど鳴り物は1つもない。
自然と声援が聞こえてくるのが不思議な空間の謎。
観る人の全員が応援団みたいなもので、試合展開が観ている人に大きな声を出させる。
知らぬ間に両手を挙げ喜び、隣人と抱き合う。
試合終了、ノーサイドの笛では目に大粒の涙も。
プレーヤーと客席の一体感。それが勝ち星を類寄せる。


(スターティングメンバー)

1.柴田知宏(3年 桂)
2.中川将弥(3年 御所実)
3.細野裕一朗(4年 京都学園)
4.伊藤鐘平(1年 札幌山の手)
5.山野将太朗(4年 京都成章)
6.眞野拓也(4年 東海大仰星)
7.李智栄(4年 大阪朝鮮)
8.フェインガ・ファカイ(1年 日本航空石川)
9.貴島由良(1年 京都成章)
10.高原慎也(4年 桂)
11.濱田将暉(2年 京都成章)
12.松本拓也(4年 大商大高)
13.下良好純(4年 東海大仰星)
14.坂本英人(3年 御所実)
15.森田慎也(4年 洛北)

(試合展開)
前半1分、試合開始すぐに先制トライを許してしまう。
このまま苦戦ムードかと思われたが、前半10分、左ラインアウトからモールを押し込み8フェインガがトライを決める。10高原がゴールをきっちり決め7-5とリードを奪う。
その後、PGを2本決め13-5。しかし前半終了間際、トライを許し失点。
前半を13-12として後半を迎える。

後半6分には、敵陣ゴール前10m中央ラックから9-10-8とつなぎ左隅へトライ。
8フェインガは、この日2本目のトライとなった。
後半11分にも、追加点を挙げる。
敵陣22m右中間ラックから10高原のキックに11濱田が素早く反応。
相手との競り合いを制してボールを押さえ、トライ成功。
この時点で京産大25-12立命館と、優位に立つ。
さらに後半23分。敵陣ゴール前10mラックから9貴島が迷いなくパスを出す。
すると、お待たせしました!と言わんばかりに見慣れた光景が視界を埋め尽くす。
『右に左に、そして前へ』。
いつか書いた記事の通りに背番号15森田が飛び込んだ。トライ。
勢い余って1回転。立ち上がるとすぐに13下良が飛びつく。
歓喜のシーンが終わると両拳を握りしめた。彼の中で何かが吹っ切れた瞬間だった。

そして後半29分、インターセプト。13下良が独走トライ。
試合終了間際、後半44分。主将・6眞野が勝負ありのトライ。
7李が駆け寄り、15森田もすぐさま喜びを分かちあった。

試合終了。「京産大44-26立命館」


「なんか、初心にかえったね。闘って争う。入れ替え戦みたいな気持ちで戦った。大学ラグビーっていいね。やっぱり素晴らしい舞台だね」
大西監督は頬を緩め、思い返したように言った。

そして最後に触れたいのは、山本湧太の存在。
今試合は新加入のフェインガに背番号8を譲る形となった。そのファカイが試合で2トライ。物怖じすることない性格が生きた。当然、観客の視線はファカイへと移る。

本来ならば「集大成として最後に意地を見せてほしいところだ」と書くのが筋なのだろうが、違う。

天理戦を終えて4日ほど。大西監督が食事中に話した内容が忘れられない。
「どのタイミングになるかわからないけど、ファカイを使ってみたい。(天理戦で見せた)あのゴール前の上手さ、執着心に期待している。だけども、モールでのボールキープ、状況判断や気持ちの強さを考えるとユウタは絶対に外せない。今年は監督として悩むことが多いなぁ」と。

立命戦のメンバーを見たとき、スタメンから外したという感覚ではなくて、ゲーム展開を考えてのメンバー選びだとすぐに察した。
山本は後半28分から試合出場。自らの役割を全うした。

そんな今回、試合直後に聞いてみた。
期待を込めて「やっぱ8番が似合うなぁ」あえて、そう問いかけてみた。
本人は「身体、動かさんとな」とだけ。彼は優しい男だ。非常に面倒見がいい。
6月の台湾遠征でも、チームに同行した自分を快く迎えてくれた。
絹川、山本の部屋で談笑したこと、彼らの心の広さは忘れられない思い出の1つだ。
最後に「来週、また頼むで!」そう伝えた。
彼は無言で右手を挙げた。
その瞳から静かな闘志を感じさせた。
彼の目は死んでない。むしろ、最終学年としての生き方を知っているように感じた。

今季チームの何がすごいのか。考えてみた。
4年生の意気込み、今季に掛ける思いがヒシヒシと伝わってくる。

「眞野、李、森田、高原、平井、城間、長田、前中、大西竜、絹川、山野、蔡、青谷、松本、西田、森川、荒木、下良、細野、三木、山本、図師、金」

それぞれが考えて動く。個の集結で一枚岩に。
眞野組の『躍進』は、まだまだ止まらない。

(試合後コメント)
大西健監督
「入替戦のような気持ちで挑んだ。ファカイはスタミナ次第でスイッチを考えていた。彼はゴール前では絶対的な強さを持っている。濱田は菅平合宿で合宿賞をあげたように、伸びは以前と別人のよう。このまま成長してくれたら…と思っている。やっぱり下良がいい仕事をしていた。眞野キャプテンを中心に李と山野の存在感が大きい。FWが頑張って、BKが応えてくれた。天理戦後、大体大が練習に来てくれました。スクラムが強化されたと思う」

元木ヘッドコーチ
「ボールを横に振り展開するラグビーに期待していた。よく動けていたと思う。首の皮一枚つながった」

眞野主将
「前半はもうちょっとリードできたかと思う。後半はスタミナが上回ったので勝つことが出来ました。ここから全勝」

長田主務
「前半13-12で折り返したときは正直に焦っていた。後半はうちのスタミナがかったと思う。仲間を信じてよかった」

中川選手
「相手がセットプレーを練習してきていた。自分はジャンパーとのタイミングを整えることを意識した。今日で満足せずに、また次も頑張りたい」

李選手
「留学に行って、相手に触られると前に進めなくなるので、ステップにも磨きをかけた。眞野主将を支えるために、自分はゲームの中で一生懸命動く」

森田選手
「NZに行っていた5か月分をチームに返そうとずっと思っていた。自分にマークが集まるので後輩を上手に使えるように意識した。(この3戦を通して)チームとして状態は上がってきている。なんとかして大学選手権に臨みたい」

濱田選手
「(MOMに選出されて)嬉しいです。あの場面で取ったら勝てると思って死ぬ気でいきました。ここまでの試合でミスが多かったので、それを修正していけたと思います。貰ったトロフィーは寮に飾ります」

下良選手
「自分達のミスは多かったので、そこを修正できれば、もっと楽にできたとは思う。(インターセプトで走っているときは)夢中でした。気持ちよかった。勝ったものの修正できる部分が多いので関大戦に向けて調整していきたい」

伊藤選手
「初めて勝てて嬉しい。前半は少し消極的になってしまったが、後半のファーストタッチがうまく弾けたのでそこから積極的にプレーできた。負けられない状況は変わらないので一戦一戦全力で挑みます」

フェインガ選手
「ガンバッタ。初めて勝ってウレシイ。次もガンバル」

高原選手
「試合前に大西監督と1点でも多くとって勝とうと話していた。立ち上がりはミスからFWを前に出せずにいた。キックは風の影響を受けすぎているのでもっと精度を上げないと。次戦以降も自分の仕事を全うするだけ」

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次戦は10月23日(日)12:00から宝が池球技場にて関大戦。