ラグビー部。関西大学Aリーグ 第1節 対同志社大
試合結果「京産大31-33同志社」
9月25日、宝ヶ池球技場にて関西大学Aリーグが幕を開けた。
昨年度は関西Aリーグ5位で大学選手権に出場したが、ルール改正により今季は上位3校のみが大学選手権に出場できることになった。
枠は狭くなったが、選手たちの姿勢は依然と変わらない。
初戦の相手は、昨季優勝校の同志社大。
何度も対戦を重ね、共に歴史を築いてきたライバル、紺グレ15人だ。
『絶対に自分たちが勝つ!』と臨む、落とせない開幕試合。勝つしか前に進む方法はない。
試合前、そう言い聞かせながら緑のピッチに向かった赤紺ジャージー23人。
そのなかでもリーグ初出場となったPR柴田(3年 桂)は、仲間からの激励で目に涙を浮かべるなど、この試合への心意気、必死さを表していた。
試合前の花道では、リザーブを含めた23人を観客席で見守るポロシャツ組が気合注入、そして背中に闘魂も入れながら、全員の拍手で送りだす。
そのとき、メンバーは1戦1戦の大切さを、先輩たちの姿を見て再確認していた。
首の故障で出場できなかった絹川(4年 洛北)の姿もそこにあった。
夏合宿前、練習中に絹川は突然、首の神経が痛み動けなくなったという。
そして急遽、入院治療。最終学年として、考えることはたくさんあった。
「この怪我は、ただの怪我じゃないね。本人も痛いけどチームとして痛い。絹川にも期待していたし、学生NO,1のスクラムが組めるメンバーだと思っていた。夏合宿で、柴田を徹底して鍛えたいと思っている」絹川が怪我をして1週間ほどのとき、大西監督が言い放っていた。
今試合スタメン起用の柴田には、そんな思いも重なったのだろう。
そして定刻の14時、ついに2016シーズン始まりの鐘が鳴った。
(スターティングメンバー)
1.柴田知宏(3年 桂高校)
2.中川将弥(3年 御所実)
3.細野裕一朗(4年 京都学園)
4.伊藤鐘平(1年 札幌山の手)
5.山野将太朗(4年 京都成章)
6.眞野拓也(4年 東海大仰星)
7.李智栄(4年 大阪朝鮮)
8.山本湧太(4年 大産大高)
9.貴島由良(1年 京都成章)
10.高原慎也(4年 桂)
11.濱田将暉(2年 京都成章)
12.松本拓也(4年 大商大高)
13.下良好純(4年 東海大仰星)
14.坂本英人(3年 御所実)
15.森田慎也(4年 洛北)
(試合展開)
前半開始すると、京産大が優位に試合を進めるシーンが目立つ。
スクラムやモールで昨季王者の同志社を圧倒。
主将、眞野を筆頭にFW陣が押せば止まらない状態が続いた。
前半8分、相手陣ゴール前中央ラックから、9貴島→8山本と繋ぎ、トライ。
京産大の気迫が勝った瞬間だった。SO高原が落ち着いてゴールを決めて7-0と先制した。
すると、同志社も反撃。
前半14分にトライ、ゴールを決められ7-7と同点。
このとき、1点を争うゲームであると会場の観客は予想したに違いない。
緊迫したムードの中、前半20分。
京産大は相手陣22メートル右中間から、高原が相手のキックを見事にチャージ。
そのまま高原がボールを拾い、右サイドへ勝ち越しトライ。
難しい角度のキックであったが、自らゴールも決めて14-7も勝ち越す。
前半26分には、得意のセットプレーで魅せた。
相手陣5メートル付近左側ラインアウトからモールを押し込む。
これをジャンボな新戦力、4伊藤鐘平がトライ。
どことなく誰かに似た姿が大勢の観客を魅了する。
会場で配布したラグビー開幕記念アスレチック特別号外の主役であった。
14年前に誓った「赤紺を着て、同志社を倒す」という目標。
本当に叶うのではないか。そう、心が動き、期待させられる。
そのままゲームは動くことなく、勝負の行方は後半へ。
「前半終了。京産大21-7同志社」
後半開始わずか6分で、誰もが予想していない事態に。
トライを重ねられ、まさかの同点となった。
京産大21-21同志社。
だが、これだから勝負は面白いのだ。ここからが勝負。
京産大フィフティーンの表情は、そう切り替えていた。
後半13分、相手陣ゴール前で何度もスクラムを組む。
相手が反則を繰り返すため、何度もスクラムで押し込もうとする。
すると、スクラムから一転、貴島がボールを拾い上げサイドを突破。そのまま飛び込みトライ。
高原がゴールを決めて、28-21。
互角の戦いが繰り広げられる中、後半16分。
同志社が左側ラインアウトからモールを押し込む。
相手9がボールを落とし、審判は笛を吹いた。
判定は、なんとペナルティトライへ…。
そのときだった―。
貴島が果敢にボールへ飛びつくシーンに問題は起こる。衝撃の行動がカメラレンズに写った。
なんと貴島は倒され、そして…相手選手に故意的に足を踏んづけられた。
右足を地面に叩きつけるように踏まれていた。
だが、なにもなかったかのように認定トライだけを宣告して試合は続行される。
同志社のゴールも成功し、28-28の同点。
この試合は近年稀に見る、好ゲームになってきた。
だけども、このシーンを境に、なんだか嫌な予感がしてきた。
真剣勝負、そしてスポーツマンシップを守るという、
学生スポーツの醍醐味が薄れてしまったシーンにも見えてしまった。
結果としての勝敗に関係なく、この好ゲームに水を差す行為にも見えてしまった。
そして後半33分。
相手に反則をもらい、京産大はペナルティゴールを狙う。
もちろん、キッカーは高原慎也。
冷静さを失わず、しっかりと決めた。
この日の決定率は100%。最高の集中力で臨んでいる。
31-28。時計は残り7分。
勝利へ向かう420秒間で、またもや悲劇が起こる。
必死に同志社の攻撃を食い止める京産大。そのとき問題は起きた。
同志社の反則により、アドバンテージをもらいながらプレー続行を選択。
間違いなく、京産大ボールで試合は動いていた。
そして、ゲームを一度切ろうと、遠方へのキックでタッチラインを割った。
すると、審判はアドバンテージ解消の判断……。
球技場、全体が揺れた。喜ぶのは紺グレを着た、観客席の人だけ。
ピッチ上の誰もが首を傾げたに違いないシーンだった。
後半42分。不運なジャッジもあり、ついに力尽きる。
同志社の逆転トライ。感極まる紺グレ集団。
何かが違うー。なぜか、そう思った。
そのままホイッスル。京産大は虚しい時間を味わった。
赤紺は泣いた。泣いた。泣いた。
そして、また泣いた。嗚咽が聞こえるほど泣いた。
結果として試合には負けた。
無惨にもスコアボードの31-33だけが残った。
試合後のストレッチ。再び泣いていた。
悔しい。ただそれだけだった。練習してきた内容、そして実力が出し切れたゲーム。
なぜか物足りない。それは、やはり白星が逃げたからなのだろうか。
何度も見てきた涙とは、また一味も二味も違って見えた。
この試合、開幕試合の同志社戦にかけた思い。
文字では表現できない何か。本当にそれが現場で見えた。
更衣室ではユニフォームを着替えるのにも時間が掛かった。
ロッカールームから出てくる選手に声を掛けにくい試合内容でもあった。
うつむきながら出ていく選手たち。
そこにFB森田が出てきた。
彼は半年間ニュージーランドへ留学していた。
いつもと変わらない様子で、『お久しぶりです』と声をかけてくれた。
試合後だが本当にいつも通りの好青年に変わりなかった。
だけど、やはり悔しい。
取材を通して4年間。試合会場で見てきた中で一番。素直に感情を前に出した。
何度も宝ヶ池で悔し涙を流した熱い男だ。
正直、聞かなくても言うことは、わかっていた。
『悔しい。今までで一番悔しいゲームになりました』
もう、その言葉で全て理解できた。悔しさを噛み殺してまで、話をしてくれた。
彼は本物の男だ。
取材の最後は、こう締めた。
「元から、勝つしかないんです。相手がどんなところだろうと。自分たちが勝つしかないんです。僕たちは、来週も頑張ります」。
自然とペンは止まった。気がつけば右手が彼の背中にあった。
本当に、取材者は見ているだけ。
だけど、ひたむきな姿に元気や勇気をもらっている。
今回、もうひとつ伝えたいことがある。
この試合でリーグ戦、初出場を勝ちとった12松本拓也のことだ。
4年生での初スタメン。本人は口にしないが不安や緊張はあったはず。
それでも試合で活躍するのは、やはり嬉しいに違いない。
この大舞台を勝ち取るには苦労話がある。
「遅くまでキックの練習に付き合ってくれるんです。同期の松本がボールを拾って、手伝ってくれるんです。優しいですよね。これが本当に嬉しくて嬉しくて。これ、いつか書いてくださいね」
彼らが2年生だったころ。
全体練習の後、自主練習をしていた森田が言っていたことを思い出した。
後輩たちに伝えたい。「隠れた努力は実る」。
ただ見ているだけの存在。
そんな4年間で、京産大ラグビー部には、たくさんのことを教えてもらった。
初戦の黒星は確かに痛かった。見ているだけでも悔しかった。
残された京産大31-33同志社のスコアボード。
だけど、まだ初戦。やり返すチャンスはあるはず。
ひたむきに突っ走ろう。学生らしく、全力で。
(試合後のコメント)
大西監督
「前半は思い通りの展開でした。後半、相手がボールを動かして来たら厳しいかなとは思っていた。(残り7分でのキックについて)最後は学生を信じて任せた。どれだけ悪い試合でも、格下は勝たないといけない。80分間の気迫を続けないと。もっと強みを出し続けないと。でも、方向性は間違ってない。今日、学生がそう思わせてくれる試合でした。毎日、愚直にやっている。だから、どうしても学生を勝たせたかった。悔しいね。何とか大学選手権に食らいつかないと」
眞野主将
「前半はセットプレーができていた。自分たちのラグビーで、ゲーム運びもよかった。一気に3点取られたのが反省点です。最後、勝ちきれなかった。トーナメントの気持ちで戦っていたのですが。また次です、次」
伊藤選手
「コンディション、雰囲気、前半のプレー、ともによかった。FW陣が練習の成果がだせていたが、勝ちきれなかった。ここ一番の集中が、もうひと踏ん張り足りなかったのでスイッチを切り替えて、集中したい」
貴島選手
「先輩方にリードしてもらいながら、勝つ気満々で挑んだ初戦だった。後半で積極的になれなかった。次は気持ちで負けないように挑みたい」
森田選手
「今までで1番悔しいゲーム。元から勝つしかないです」
グラウンドに向かう眞野主将
試合前の赤紺戦士
ゴールを決める高原選手
華麗なステップで相手選手を翻ろうする森田選手
貴島選手のトライ
喜びを分かち合う選手たち
次戦は、10月2日 対天理大 (花園) 12時開始予定
試合結果「京産大31-33同志社」
9月25日、宝ヶ池球技場にて関西大学Aリーグが幕を開けた。
昨年度は関西Aリーグ5位で大学選手権に出場したが、ルール改正により今季は上位3校のみが大学選手権に出場できることになった。
枠は狭くなったが、選手たちの姿勢は依然と変わらない。
初戦の相手は、昨季優勝校の同志社大。
何度も対戦を重ね、共に歴史を築いてきたライバル、紺グレ15人だ。
『絶対に自分たちが勝つ!』と臨む、落とせない開幕試合。勝つしか前に進む方法はない。
試合前、そう言い聞かせながら緑のピッチに向かった赤紺ジャージー23人。
そのなかでもリーグ初出場となったPR柴田(3年 桂)は、仲間からの激励で目に涙を浮かべるなど、この試合への心意気、必死さを表していた。
試合前の花道では、リザーブを含めた23人を観客席で見守るポロシャツ組が気合注入、そして背中に闘魂も入れながら、全員の拍手で送りだす。
そのとき、メンバーは1戦1戦の大切さを、先輩たちの姿を見て再確認していた。
首の故障で出場できなかった絹川(4年 洛北)の姿もそこにあった。
夏合宿前、練習中に絹川は突然、首の神経が痛み動けなくなったという。
そして急遽、入院治療。最終学年として、考えることはたくさんあった。
「この怪我は、ただの怪我じゃないね。本人も痛いけどチームとして痛い。絹川にも期待していたし、学生NO,1のスクラムが組めるメンバーだと思っていた。夏合宿で、柴田を徹底して鍛えたいと思っている」絹川が怪我をして1週間ほどのとき、大西監督が言い放っていた。
今試合スタメン起用の柴田には、そんな思いも重なったのだろう。
そして定刻の14時、ついに2016シーズン始まりの鐘が鳴った。
(スターティングメンバー)
1.柴田知宏(3年 桂高校)
2.中川将弥(3年 御所実)
3.細野裕一朗(4年 京都学園)
4.伊藤鐘平(1年 札幌山の手)
5.山野将太朗(4年 京都成章)
6.眞野拓也(4年 東海大仰星)
7.李智栄(4年 大阪朝鮮)
8.山本湧太(4年 大産大高)
9.貴島由良(1年 京都成章)
10.高原慎也(4年 桂)
11.濱田将暉(2年 京都成章)
12.松本拓也(4年 大商大高)
13.下良好純(4年 東海大仰星)
14.坂本英人(3年 御所実)
15.森田慎也(4年 洛北)
(試合展開)
前半開始すると、京産大が優位に試合を進めるシーンが目立つ。
スクラムやモールで昨季王者の同志社を圧倒。
主将、眞野を筆頭にFW陣が押せば止まらない状態が続いた。
前半8分、相手陣ゴール前中央ラックから、9貴島→8山本と繋ぎ、トライ。
京産大の気迫が勝った瞬間だった。SO高原が落ち着いてゴールを決めて7-0と先制した。
すると、同志社も反撃。
前半14分にトライ、ゴールを決められ7-7と同点。
このとき、1点を争うゲームであると会場の観客は予想したに違いない。
緊迫したムードの中、前半20分。
京産大は相手陣22メートル右中間から、高原が相手のキックを見事にチャージ。
そのまま高原がボールを拾い、右サイドへ勝ち越しトライ。
難しい角度のキックであったが、自らゴールも決めて14-7も勝ち越す。
前半26分には、得意のセットプレーで魅せた。
相手陣5メートル付近左側ラインアウトからモールを押し込む。
これをジャンボな新戦力、4伊藤鐘平がトライ。
どことなく誰かに似た姿が大勢の観客を魅了する。
会場で配布したラグビー開幕記念アスレチック特別号外の主役であった。
14年前に誓った「赤紺を着て、同志社を倒す」という目標。
本当に叶うのではないか。そう、心が動き、期待させられる。
そのままゲームは動くことなく、勝負の行方は後半へ。
「前半終了。京産大21-7同志社」
後半開始わずか6分で、誰もが予想していない事態に。
トライを重ねられ、まさかの同点となった。
京産大21-21同志社。
だが、これだから勝負は面白いのだ。ここからが勝負。
京産大フィフティーンの表情は、そう切り替えていた。
後半13分、相手陣ゴール前で何度もスクラムを組む。
相手が反則を繰り返すため、何度もスクラムで押し込もうとする。
すると、スクラムから一転、貴島がボールを拾い上げサイドを突破。そのまま飛び込みトライ。
高原がゴールを決めて、28-21。
互角の戦いが繰り広げられる中、後半16分。
同志社が左側ラインアウトからモールを押し込む。
相手9がボールを落とし、審判は笛を吹いた。
判定は、なんとペナルティトライへ…。
そのときだった―。
貴島が果敢にボールへ飛びつくシーンに問題は起こる。衝撃の行動がカメラレンズに写った。
なんと貴島は倒され、そして…相手選手に故意的に足を踏んづけられた。
右足を地面に叩きつけるように踏まれていた。
だが、なにもなかったかのように認定トライだけを宣告して試合は続行される。
同志社のゴールも成功し、28-28の同点。
この試合は近年稀に見る、好ゲームになってきた。
だけども、このシーンを境に、なんだか嫌な予感がしてきた。
真剣勝負、そしてスポーツマンシップを守るという、
学生スポーツの醍醐味が薄れてしまったシーンにも見えてしまった。
結果としての勝敗に関係なく、この好ゲームに水を差す行為にも見えてしまった。
そして後半33分。
相手に反則をもらい、京産大はペナルティゴールを狙う。
もちろん、キッカーは高原慎也。
冷静さを失わず、しっかりと決めた。
この日の決定率は100%。最高の集中力で臨んでいる。
31-28。時計は残り7分。
勝利へ向かう420秒間で、またもや悲劇が起こる。
必死に同志社の攻撃を食い止める京産大。そのとき問題は起きた。
同志社の反則により、アドバンテージをもらいながらプレー続行を選択。
間違いなく、京産大ボールで試合は動いていた。
そして、ゲームを一度切ろうと、遠方へのキックでタッチラインを割った。
すると、審判はアドバンテージ解消の判断……。
球技場、全体が揺れた。喜ぶのは紺グレを着た、観客席の人だけ。
ピッチ上の誰もが首を傾げたに違いないシーンだった。
後半42分。不運なジャッジもあり、ついに力尽きる。
同志社の逆転トライ。感極まる紺グレ集団。
何かが違うー。なぜか、そう思った。
そのままホイッスル。京産大は虚しい時間を味わった。
赤紺は泣いた。泣いた。泣いた。
そして、また泣いた。嗚咽が聞こえるほど泣いた。
結果として試合には負けた。
無惨にもスコアボードの31-33だけが残った。
試合後のストレッチ。再び泣いていた。
悔しい。ただそれだけだった。練習してきた内容、そして実力が出し切れたゲーム。
なぜか物足りない。それは、やはり白星が逃げたからなのだろうか。
何度も見てきた涙とは、また一味も二味も違って見えた。
この試合、開幕試合の同志社戦にかけた思い。
文字では表現できない何か。本当にそれが現場で見えた。
更衣室ではユニフォームを着替えるのにも時間が掛かった。
ロッカールームから出てくる選手に声を掛けにくい試合内容でもあった。
うつむきながら出ていく選手たち。
そこにFB森田が出てきた。
彼は半年間ニュージーランドへ留学していた。
いつもと変わらない様子で、『お久しぶりです』と声をかけてくれた。
試合後だが本当にいつも通りの好青年に変わりなかった。
だけど、やはり悔しい。
取材を通して4年間。試合会場で見てきた中で一番。素直に感情を前に出した。
何度も宝ヶ池で悔し涙を流した熱い男だ。
正直、聞かなくても言うことは、わかっていた。
『悔しい。今までで一番悔しいゲームになりました』
もう、その言葉で全て理解できた。悔しさを噛み殺してまで、話をしてくれた。
彼は本物の男だ。
取材の最後は、こう締めた。
「元から、勝つしかないんです。相手がどんなところだろうと。自分たちが勝つしかないんです。僕たちは、来週も頑張ります」。
自然とペンは止まった。気がつけば右手が彼の背中にあった。
本当に、取材者は見ているだけ。
だけど、ひたむきな姿に元気や勇気をもらっている。
今回、もうひとつ伝えたいことがある。
この試合でリーグ戦、初出場を勝ちとった12松本拓也のことだ。
4年生での初スタメン。本人は口にしないが不安や緊張はあったはず。
それでも試合で活躍するのは、やはり嬉しいに違いない。
この大舞台を勝ち取るには苦労話がある。
「遅くまでキックの練習に付き合ってくれるんです。同期の松本がボールを拾って、手伝ってくれるんです。優しいですよね。これが本当に嬉しくて嬉しくて。これ、いつか書いてくださいね」
彼らが2年生だったころ。
全体練習の後、自主練習をしていた森田が言っていたことを思い出した。
後輩たちに伝えたい。「隠れた努力は実る」。
ただ見ているだけの存在。
そんな4年間で、京産大ラグビー部には、たくさんのことを教えてもらった。
初戦の黒星は確かに痛かった。見ているだけでも悔しかった。
残された京産大31-33同志社のスコアボード。
だけど、まだ初戦。やり返すチャンスはあるはず。
ひたむきに突っ走ろう。学生らしく、全力で。
(試合後のコメント)
大西監督
「前半は思い通りの展開でした。後半、相手がボールを動かして来たら厳しいかなとは思っていた。(残り7分でのキックについて)最後は学生を信じて任せた。どれだけ悪い試合でも、格下は勝たないといけない。80分間の気迫を続けないと。もっと強みを出し続けないと。でも、方向性は間違ってない。今日、学生がそう思わせてくれる試合でした。毎日、愚直にやっている。だから、どうしても学生を勝たせたかった。悔しいね。何とか大学選手権に食らいつかないと」
眞野主将
「前半はセットプレーができていた。自分たちのラグビーで、ゲーム運びもよかった。一気に3点取られたのが反省点です。最後、勝ちきれなかった。トーナメントの気持ちで戦っていたのですが。また次です、次」
伊藤選手
「コンディション、雰囲気、前半のプレー、ともによかった。FW陣が練習の成果がだせていたが、勝ちきれなかった。ここ一番の集中が、もうひと踏ん張り足りなかったのでスイッチを切り替えて、集中したい」
貴島選手
「先輩方にリードしてもらいながら、勝つ気満々で挑んだ初戦だった。後半で積極的になれなかった。次は気持ちで負けないように挑みたい」
森田選手
「今までで1番悔しいゲーム。元から勝つしかないです」
グラウンドに向かう眞野主将
試合前の赤紺戦士
ゴールを決める高原選手
華麗なステップで相手選手を翻ろうする森田選手
貴島選手のトライ
喜びを分かち合う選手たち
次戦は、10月2日 対天理大 (花園) 12時開始予定