『前者の戯言』 硬式野球部シリーズ① 藤原隆蒔(法・4年次)
「サヨナラホームラン!?最終打席にドラマあり!」

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近江高で主軸を任され、甲子園出場。
バックスクリーンへ豪快に放り込み雄叫びを上げた。

京産大に進学後、すぐさまレギュラーを掴みとる。
1年生ながら「6番:指名打者」で全日本大学選手権記念大会(東京ドーム)に出場。

2年生(春)から4番打者として豪打を披露。
京産大では18年ぶりの1試合2本塁打。

一塁手、三塁手として守りでもチームに貢献。
なかでもバント処理でゲーム展開を引き寄せてきた。

2年生(秋)には、創部初の神宮大会出場に大きく貢献。
3年生では優勝の味を噛みしめることはなかったが、
存在感のある選手として相手に恐れられた。

4年生(春)には、主将・福山と4番、5番を打ち「Fの共鳴」を結成。
まさにミラクルVと呼ばれる逆転優勝を果たした。

大学日本代表候補にも選出され、選考合宿に参加。
紅白戦で先制2塁打を放つなど、結果を残すも落選した。

4年生(秋)は、シーズン途中で手の故障を発生させるが
隠し通してプレーを続けた。


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「サヨナラホームラン!?最終打席にドラマあり!」

迷うことなく、振り切った。背中までバットが届くような豪快フルスイング。
今季、不振に苦しんだ4番打者。その持ち味が学生最後の打席で舞い降りる。
『野球の神様』は試練を与えた。大学通算100安打を視野に入れ、臨んだ今季リーグ。
打席に入る前、考えれば考えるほど迷いが生まれていた。Hのランプが灯らぬ試合が続く。

「ヤバイっす、ほんまに」。彼らしい表現で取材に答えた。
どんな試合もベンチ裏では落ち着いた表情を見せる。

だが、内心は悔しい思いを隠していたのだろう。試合後の選手ミーティングが終わっても、座りこんで何か考え事をしていた。「打席に入るまでの集中力がすごい。誰も話し掛けられない雰囲気」と、主将・福山も評する。

そんな1打席に懸ける思いー。最終戦、背番号10を『野球の神様』は見捨てなかった。
皇子山球場、学生最後の打席。何かが起きそうな雰囲気を感じる。
彼が右打席に入る前。根拠のない自信がカメラマンにはあった。
わざわざ後輩に頼み込んで、カメラ役を代わってもらうことに。

カウント3-1。「ここしかない」撮る準備を整える。8シーズンもカメラ席で観てきた。
打つタイミングが、なんとなくだが、わかる。右膝を軽く曲げ、左足を上げる。
バットのグリップが高く上がったときに感じた。「きた!」人差し指に力を入れる。
根拠のなかった自信を「確信」に変える一振り。悩み抜いた男が振り抜いた。

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打球は高々とレフト方向へ。フェアかファールか。レンズ越しに「切れるな」そう願う。
「どっかいっちまえ」と言わんばかりに力強いスイング。

ポール直撃―。当たった。そのスイングが正解だったのか。
審判が右手をグルグル大きくまわす。
一塁ベース手前で照れくさく笑っていた。ゆっくりとダイアモンドを一周。
観客の視線を独り占め。ベンチ前では祝福のハイタッチ。その表情が忘れられない。
この日は大活躍、3安打4打点1ホーマー。迷いは空の彼方へ消えていった。

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『前者』にとっても引退試合。硬式野球部での最後の取材。
寂しい思いで9イニングを見守った。

試合後に聞いてみることに。
「最後、打つと思ったで」。

すると、やはり彼らしい返答がきた。
「やっぱり?でも、リーグ打てんかったわ」。

そんなことない。本人を前に言えなかったけど、心の中で思っていた。
「記録よりも記憶に残る選手」だと—。


わら


ふじ


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4年間ワクワクさせてくれた藤原隆蒔選手。
次のステージでも応援しています。

「ありがとう」。また、どっかの球場で会おうな。