『前者の戯言』 ラグビーシリーズ③
長田恒輝 (法 4年次)
赤紺を脱ぎブレザーへ 「7月9日の決意」

平日15時30分過ぎ。神山グラウンドへと続く、勾配の急な坂道を1人で登っていく。練習開始は16時40分ごろ。1時間も早く練習場に到着する。
長田恒輝(4年 洛北)が赤紺ユニフォームを着ることは、もうない。現在は、京産大ラグビー部をまとめる「主務」として、チームを支えている。プレーヤーだった頃は自分のことで精一杯だったが、裏方に回ってからは選手や首脳陣のため常に必死だ。
練習グラウンドやキャンパス(大学内)で走っている姿を、度々、目撃することがある。なぜ、そんなに駆けまわっているのか。その答えは、この男の『決意』にある。

昨冬のオフ(休み期間)が明けて、練習が再び開始。そこから1週間ほどのときだった。練習が終わり、ぐったり寮に帰ると携帯電話が鳴る。突然の着信だったため、少し焦った。急いで画面を見ると「大西先生」との表示だったから、それに加えて、余計に焦ったという。
電話の内容はシンプルだった。要件は1つだけ。「明日の朝練習、はやめに来てくれるか?」。すぐさま返事をする。「はい、わかりました」。その一言だけで電話は終わる。わずか15秒ほどの出来事だったが、『コトの重大さ』を悟ったという。
翌日の朝練習。電話で言われた通り、普段よりも早めに集合した。そして呼び出され、こう告げられる。「おはよう。長田よ、今年の主務を任せてもいいか」。すぐに返事をした。「はい…」。
だが、心の中では選手として赤紺のユニフォームを着たいという未練がある。主務の話だと予想はできていたが、いざ伝えられると悔しく、なぜか寂しい思いがした。大西先生だけではなく、元木コーチにも伝えられた。「お前しかおらん。主務をやってくれ、頼む」。2人の言葉で主務を引き受けた。
最初は選手兼任マネージャーで練習にも参加。春シーズンが終わるまでは、プレーヤーとしてもチームに携わっていた。兼任でも順調に仕事ができているように見えた。しかし、菅平での夏合宿を手配していたとき、考え込んだ。「夏合宿や秋リーグ(公式戦)を考えると、兼任は限界だと思った。今日(7月9日)で選手は終わり。主務の仕事に全うしていこう」。
この日の練習後、人知れず悩み、人目をはばからず泣いてしまうのである。そして、ここで決めた。
赤紺を脱ぎブレザーに着替える。もう、ユニフォームは着ない、チームのために。
『7月9日の決意』を長田は忘れない。

主務になれば、生活リズムも変わる。練習の1時間前からグラウンドに向かい、熱心に準備する。また、相部屋が基本の寮生活。選手のときは前中良太(4年 向陽)と同部屋だったが、主務になってからは1人部屋になった。「部屋が静かになった。心地は良いけど、寂しい」と、相方を懐かしむ。試合ではブレザーを着て、選手たちを明るい表情でフィールドへ送り出す。その姿は、左胸のエンブレムと共に輝き、誇らしい。
大学選手権への出場切符を勝ち取った、近畿大戦。「素直に嬉しい。(FL:フランカーでポジションが一緒だった)眞野と李にハイタッチしてもらった。森田(洛北高からの同期)も喜んでた」と、笑みをこぼした。そして、嬉しそうにコメントを続ける。「元木さんに初めて握手してもらえた。主務として認められた気がする」。

『7月9日の決意』から5ヶ月が経つ。ここまで奮闘してきたが、まだ主務として心残りがある。「最後は大西先生に握手してもらいたい。実は、まだなので…」と、照れながら話す。
12月11日(日)の大学選手権。果たして、主務・長田は大西先生に握手してもらえるだろうか。
もちろん勝って、その姿が見たい。
長田恒輝 (法 4年次)
赤紺を脱ぎブレザーへ 「7月9日の決意」

平日15時30分過ぎ。神山グラウンドへと続く、勾配の急な坂道を1人で登っていく。練習開始は16時40分ごろ。1時間も早く練習場に到着する。
長田恒輝(4年 洛北)が赤紺ユニフォームを着ることは、もうない。現在は、京産大ラグビー部をまとめる「主務」として、チームを支えている。プレーヤーだった頃は自分のことで精一杯だったが、裏方に回ってからは選手や首脳陣のため常に必死だ。
練習グラウンドやキャンパス(大学内)で走っている姿を、度々、目撃することがある。なぜ、そんなに駆けまわっているのか。その答えは、この男の『決意』にある。

昨冬のオフ(休み期間)が明けて、練習が再び開始。そこから1週間ほどのときだった。練習が終わり、ぐったり寮に帰ると携帯電話が鳴る。突然の着信だったため、少し焦った。急いで画面を見ると「大西先生」との表示だったから、それに加えて、余計に焦ったという。
電話の内容はシンプルだった。要件は1つだけ。「明日の朝練習、はやめに来てくれるか?」。すぐさま返事をする。「はい、わかりました」。その一言だけで電話は終わる。わずか15秒ほどの出来事だったが、『コトの重大さ』を悟ったという。
翌日の朝練習。電話で言われた通り、普段よりも早めに集合した。そして呼び出され、こう告げられる。「おはよう。長田よ、今年の主務を任せてもいいか」。すぐに返事をした。「はい…」。
だが、心の中では選手として赤紺のユニフォームを着たいという未練がある。主務の話だと予想はできていたが、いざ伝えられると悔しく、なぜか寂しい思いがした。大西先生だけではなく、元木コーチにも伝えられた。「お前しかおらん。主務をやってくれ、頼む」。2人の言葉で主務を引き受けた。
最初は選手兼任マネージャーで練習にも参加。春シーズンが終わるまでは、プレーヤーとしてもチームに携わっていた。兼任でも順調に仕事ができているように見えた。しかし、菅平での夏合宿を手配していたとき、考え込んだ。「夏合宿や秋リーグ(公式戦)を考えると、兼任は限界だと思った。今日(7月9日)で選手は終わり。主務の仕事に全うしていこう」。
この日の練習後、人知れず悩み、人目をはばからず泣いてしまうのである。そして、ここで決めた。
赤紺を脱ぎブレザーに着替える。もう、ユニフォームは着ない、チームのために。
『7月9日の決意』を長田は忘れない。

主務になれば、生活リズムも変わる。練習の1時間前からグラウンドに向かい、熱心に準備する。また、相部屋が基本の寮生活。選手のときは前中良太(4年 向陽)と同部屋だったが、主務になってからは1人部屋になった。「部屋が静かになった。心地は良いけど、寂しい」と、相方を懐かしむ。試合ではブレザーを着て、選手たちを明るい表情でフィールドへ送り出す。その姿は、左胸のエンブレムと共に輝き、誇らしい。
大学選手権への出場切符を勝ち取った、近畿大戦。「素直に嬉しい。(FL:フランカーでポジションが一緒だった)眞野と李にハイタッチしてもらった。森田(洛北高からの同期)も喜んでた」と、笑みをこぼした。そして、嬉しそうにコメントを続ける。「元木さんに初めて握手してもらえた。主務として認められた気がする」。

『7月9日の決意』から5ヶ月が経つ。ここまで奮闘してきたが、まだ主務として心残りがある。「最後は大西先生に握手してもらいたい。実は、まだなので…」と、照れながら話す。
12月11日(日)の大学選手権。果たして、主務・長田は大西先生に握手してもらえるだろうか。
もちろん勝って、その姿が見たい。











このブログにコメントするにはログインが必要です。
さんログアウト
この記事には許可ユーザしかコメントができません。