8月17日に伊豆ベロドロームで行われた文部科学大臣杯第74回全日本大学対抗選手権自転車競技大会。
3日間に分けられるトラック競技の1日目。

最初に行われたのは、京産大トラックの目玉競技である男子4kmチームパーシュート(以下TP)予選である。
4人1組で隊列を組み、4kmを3番目に走り抜けた選手のタイムを競うこの種目。
昨年は優勝を目指すも予選で隊列が崩壊、決勝へ進むことは叶わなかった。
秋田謙監督は「昨年の経験は活きている、今年は慎重に慎重を期してオーダーを組んだ」と語った。
今年も目標は優勝。そして4分10秒切り、それは学連記録の樹立を意味する。「監督として、いくつかの優勝は経験させて頂いたが、まだ記録を残したことは一度もない。ここで記録を残して、京産大の時代を築きたい」。秋田監督の言葉同様、選手達も目標に向けて貪欲だった。松下綾馬(4)は、「直前でオーダー変更があったほど、選び抜かれた4人。4分10秒切りも十分あり得る」と意気込んだ。
しかし、出走直前の選手達は緊張を隠せていなかった。初のインカレである1年次生の清水大樹以外は昨年のTPメンバー。本番の怖さを体験している。
「今までで1番と言っていいぐらい緊張した」そう語った吉岡衛(2)の横では中井唯晶(4)が深呼吸を繰り返す。松下も「走り出すまで足がフワフワしていた」振り返った。
迎えた予選本番。中井、松下、吉岡、清水の4名は隊列を作り順調な滑り出しを見せたが、途中で中井が千切れ、3人で回す苦しい状況に。しかし、なんとか立て直し、終わってみれば4分12秒895の好タイムで暫定トップとなった。
決勝に進出できるのは上位2校、最後から2組目の日大が首位に立ち、最終組の中央大に全てが委ねられた。「(中央大の走りは)まともに見れなかった」と苦笑いを見せた中井。結果、2位をキープし決勝への切符を勝ち取った。その瞬間、選手達は一気に緊張から解放され全員が笑みをこぼした。
この結果を受け、秋田監督は軽くガッツポーズを取り少し表情を崩した。
しかしすぐに表情を戻し、決勝について「僕の中では日大は強さの象徴。そんなチームと決勝を戦えるのは誇らしいこと」と語った。
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TP予選、前から清水、吉岡、松下、中井

TP予選インタビュー
中井
緊張と興奮でミスがでた。練習で調子が良かったのもあって飛ばし過ぎて千切れてしまった。決勝に進めて本当にホッとした。ここ(決勝)に乗らないとなんの意味もなかった。明日のマディソンを勝って、明後日のTPも優勝したい。
松下
出走直前はものすごく緊張したが、走り出してからはいつも通りに走れた。途中3人になったがうまく立て直した。明後日の決勝では学連新記録を更新したい。
吉岡
なんとか決勝に残れて去年の悔しさをぶつけられた。中央大の結果を待つ間は、いつもとは違う緊張感だった。まともに中井さんと外に走りに行ってた。今めちゃくちゃホッとしてます。
明日のマディソンを勝って弾みをつけたい。
清水
チームパーシュートは期待がかかっている種目だったので、そのプレッシャーはあったが、必要以上に緊張することはなかった。それでも最後の結果が発表されるまではずっと祈っていた。
今日の走りでいくつかミスがあったので、決勝までに先輩達と話し合って改善できればと思う。



続いて午後から行われた男子4kmインディヴィデュアルパーシュート(以下IP)予選には、昨年度インカレ王者の松下がTPに続いて出場。出走までに昨年度の優勝タイムを上回る選手が3名出てくるという危機を迎えた松下。しかし、「(待機中)勝てると思っていた」と、TPとは一転して落ち着いた態度を見せた。迎えた第10組。「終盤に上げていく走りを心がけた」と語ったように、松下はぐんぐん加速していく。最後は半周先の相手を抜き去り、あわや学連記録という4分31秒870の好タイムを残し、拍手に包まれフィニッシュ。暫定トップに立った。しかし直後に、日大の選手に学連記録を樹立され2位に。それでも翌日のIP1.2位決定戦へと駒を進めた。
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IP予選インタビュー
松下
決勝は正直厳しい戦いになる。今回のタイムは自己ベストを大幅に更新したが、それでも相手に負けている。
なので決勝は序盤からしっかりとペースを上げて相手と渡り合う試合をしたい。
昨年度優勝という結果より、6月のトラック選手権6位という結果があるので、挑戦者の気持ちで向かっていきたい。
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写真左、松下



この日行われた最終種目、男子オムニアム予選には曽我部厚誠(3)が出場した。
オムニアムとは最終着順を競うスクラッチ。毎週先頭がポイントを獲得し、その合計を競うテンポレース。
2週毎に最下位が脱落していくエリミネーション。10週ごとに先頭から4名にポイントを与え、その合計を競うポイントレースの4つからなり、それぞれの順位に与えられる得点の合計を競う。
この予選では15名2組30人が参加し、各組10名が決勝に進む。
曽我部は5位で危なげなく予選を通過。決勝進出を決めた。
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オムニアム予選インタビュー
調子はよくなかったが、決勝に進める人数の方が多いので普通に走れば大丈夫だと思った。
決勝では調子を上げていきたい。



大会二日目
最初に行われたのはチームスプリント予選。
京産大は第6組、伊藤皓平(2)、石川航大(1)、清水が出場した。
3人1組で出走し、先頭の1名がゴールを通過したタイムで競うこの競技。
徐々にスピードを上げていき、49秒954でフィニッシュ。予選通過には及ばなかった。
しかし、このタイムはチームとしてのベストを更新する結果となった。
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チームスプリント予選インタビュー
伊藤
ベストタイムが出たのでチームとしてはよかった、短距離で京産大に貢献したかった。

清水
そこまで合わせられなかったが、ベストタイムが出た。
今回の結果は良いイメージのほうが大きい。

石川
3走を任されたが、出だしでしっかり前につけなかった。
もっとしっかり付けていたらもう少しタイムも伸びたし、チームにも貢献できた。
初めてのインカレでいつもとは違う緊張感があった。



次に行われたのは男子オムニアム決勝。
この日のうちに4つの種目を行い優勝者を決める。
まず行われたのはスクラッチ10km
しかし曽我部の調子はいまいち上がらず、11位という結果に。
約1時間後に行われたテンポレースではポイントを一度も取れず着順で11位という厳しい状況に。
約3時間後に行われたエリミネーションでは粘りの走りを見せた。
徐々に人数が減る中、曽我部は良い位置をキープしながらレースを進める。
最後の3名に絞る周回でもゴールライン直前まで上位をキープしていたが、最後の最後に後ろからかわされ惜しくも4位に。
この時点で8位と、トラック順位得点圏内。最後のポイントレースに全てがゆだねられた。
最後のポイントレースはトラックを100周計25km。つまり10度のポイント周回がある。
1回目のポイント周回を3位で通過すると、3回目のポイント周回は2位で通過。順調かと思われたが、そこから中々ポイントが伸びきらず最終的にポイントレースは6位。
その結果を受け、オムニアム全体での順位は9位と、1つ下げる形になった。
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オムニアム決勝インタビュー
目指してたのは優勝だったが、スクラッチとテンポで順位を落としてしまった。そこでちゃんと上位に食い込めていたら入賞は出来たんじゃないかと思う。それによってポイントレースの展開も変わったかもしれない。
スクラッチとテンポは足が回ってなかった。ポイントレースでは上位の選手を他の選手と追おうと思っていたが、他が協力してくれなかった。だが、去年より内容はよかった。


2日目午前の最終種目は男子4kmIP決勝。
2連覇をかけたこの試合。松下は出走前、いつも通り入念にストレッチを行うと、静かにトラックに入った。
バイクをスタート位置にセットすると、手を大きく広げ、天を仰ぐ。ハンドルに手をかけカウントダウンが終わるとスタートの合図が会場に響き渡った。
序盤から松下はリードを許す厳しい展開に。
松下も食らい付くが、差は縮まらず。
その後も徐々に広げられ、2着でゴールラインを通過、準優勝となった。
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IP決勝インタビュー
松下
悔しかったですが、相手が強かった。脚が違いすぎました。
ペースを刻んだ走りのほうがタイムは出ると分かっていたが、勝つために最初からつっこんで対等な勝負をしにいった。その結果全てを出して負けたので、悔いは無いです。

秋田監督
タイムをリードされている相手に対して最初からつっこむのはセオリー通りの走り、それでも相手から一度のリードも奪えなかった。完敗でした。しかし、2位というのは立派な結果です。
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この日の京産大の最終出走種目は男子マディソン決勝。
マディソンとは、2人一組で行われるポイントレース形式のレース。片方が休み、片方がレースを進める。
交代は交代する選手が新たに走る選手と手を繋ぎ、前に放り投げるようにして行われる。
京産大は中井・吉岡ペアが出走した。去年と今年の全日本トラックを連覇しており、3連覇が期待されている。
絶対に勝ちたい1戦だった。しかし、序盤から日大がペースをあげ、後手に回ってしまい、そのままポイントを重ねられる。食らいつく中井・吉岡は後半に粘りを見せ、最終周回をトップでフィニッシュするも、ポイント差で日大に敗れ、2位に終わった。
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マディソン決勝インタビュー
中井
連覇がかかってる、勝たなきゃいけない大会だった。
(2位という結果については)優勝できなかったら一緒だったので、負けは負けです。

吉岡
緊張感はあった。自信はあったので余裕はあったが、その自信が過信になってしまった。
もっといける、もっといけると思っていたら後ろ後ろにまわってしまって、気付いたときには手遅れになってしまった。(序盤は他大学の動きを見るという作戦について)それで後ろに回りすぎて他の大学にも余裕を与えてしまった。もっといけるという自信があったが、それが自分で自分を殺す結果になった。
(2位という結果について)優勝だけを意識して走ったので、正直それ以外の順位に価値は無い。
ゼロからもう一回始めないといけないと感じた。

秋田監督
日大があんなに強いと思わなかった。
序盤は周りを見る作戦だったが、序盤に勝負を決められてしまった。
優勝を狙っていただけに、普通だったら受け入れるのに時間がかかるが、圧倒的だった。
何よりも勝ちたいレースだっただけに悔しい。



インカレトラック最終日
この日の京産大出走種目は1kmタイムトライアル(以下1kmTT)と、TP決勝。
まずは1kmTTから行われた。
出走したのは伊藤・石川の2名
1kmを単独で走りきり、そのタイムを競う。
第4組の石川は1分06秒846、第7組の伊藤は実力を出しきれず、1分09秒554でフィニッシュした。
互いに入賞は叶わず、敗退となった。


1kmTTインタビュー
伊藤
ぶっつけ本番だったのもあって、タイムが伸びなかった。
ロードレースも選ばれたら、しっかりチームを支えたい。
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石川
ベストタイムが出せた。入賞には絡めなかったが、よかった。
納得できる形でインカレを終えることが出来た。
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インカレトラックの最終種目、男子4kmTP決勝。
このチームの悲願である、TP優勝をかけた、まさに大一番だ。
「自分達の走りが出来れば優勝できる、4分10秒を出せる」選手たちは口々にそう語った。
予選同様、各々が入念なアップを済ませ、レース開始を待つ。
3・4位決勝で2度の仕切りなおしがあり、またそれぞれアップを始める。
前の試合が終わり、決勝が始まる。
バイクに跨り、スタートの合図を待つ。
カウントダウンが始まり、合図が響き、一斉に4人が飛び出した。
スタート直後、日大の声援が会場を覆う。
タイムも聞こえないほどの歓声に、選手たちは飲み込まれる。
展開も日大がレースを優位に進める。
周を重ねるごとに増す声援に加え、途中で京産大は数を1人減らし、状況は厳しくなる。
結果、差を詰められずフィニッシュ。ここでも準優勝となった。
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TP決勝インタビュー
清水
悔しい。決勝の雰囲気でプレッシャーを感じた。相手チームの声援に圧倒された。
予選でペースをあげすぎた部分の修正は試みたが、自分の走りをさせてもらえなかった。
総合的なタイムはなんともいえないが、自分のタイムに関しては、早くはいりすぎていたり、逆に抑えすぎてしまったりした。来年以降は4年次生は抜けてしまうので、そこをどう穴埋めしていくかを考えながらやっていきたい。

松下
前日よりはリラックスしていたが、始まってからのほうが大変だった。
日大に飲まれてしまった。本当にアウェーという感じで、自分達の走りができなかった。声援でタイムが聞こえず、自分達がどのくらいのペースで走っているのかも分からなかった。
日大に自分達が得意とする種目を取られてしまっていたので、何としても勝ちたかった。
今年は優勝するつもりで走った。去年も優勝するつもりで走り、分解して予選で負け、今年は決勝で負け、去年とは違う悔しさを味わった。
(2位という結果について)負けはしたが、自分が4年間やってきたことが形となったかなという気持ち。

吉岡
集中はしてたが雰囲気に呑まれた。タイムも分からずにペースを崩してしまった。
4年次生は最後だったので、申し訳ない。来年リベンジすることが今年の結果に報いる唯一の方法だと思うので、1年かけて決勝に帰ってきたい。

中井
日大が強かった。
TPを任されているというのは名誉なことであるが、重圧もあった。今は開放されたという気持ち。
昨日ほどの緊張は無く、リラックスしていた。
(結果に関しては)2位というのは負けてしかいない、一番悔しい順位で終わったが、やれることはやった。

秋田監督
予想以上に日大が速く突っ込んできて、選手たちも焦ったと思う。
3日目の疲労感というのも出ていた。何年間と勝負をしてきたチームの強さを見せ付けられた。
力負けだったが、選手たちは良い勝負をした。
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左から、松下、清水、中井、吉岡