第72回 全日本大学サッカー選手権大会
準決勝 流通経済大戦(2023年12月21日)
複数の主力選手を欠く中で挑んだ準決勝は、前後半ともにリードするも、追いつかれる展開となり、延長戦へ。互角の戦いで勝負はPK戦へと持ち越された。最後は流経大5人目のキッカーが外し、決勝への切符を掴み取った。
【スターティングメンバー】
1 GK 山本 透衣(4年=コンサドーレ札幌U18・FC大阪内定)
2 DF 西矢 慎平(4年=神戸弘陵学園高・カターレ富山内定)
5 DF 横窪 皇太(3年=金光大阪高)
24 DF 小野 成夢(1年=愛媛FC U-18)
25 DF 楠瀬 海(3年=高知高)
6 MF 川上 陽星(4年=作陽高)
20 MF 伊藤 翼(1年=セレッソ大阪U18)
7 MF 福井 和樹(4年=ガンバ大阪ユース・SC相模原内定)
10 MF 食野 壮磨(4年=ガンバ大阪ユース・東京ヴェルディ内定)
11 MF 夏川 大和(4年=草津東高・FC大阪内定)
9 FW 菅野 翔斗(3年=サンフレッチェ広島ユース)
【サブメンバー】
12 GK 林 憲太朗(3年=滝川第二高)
3 DF 佐藤 幸生(4年=サンフレッチェ広島ユース)
14 MF 城水 晃太(3年=サンフレッチェ広島ユース)
15 MF 石原 央羅(3年=サガン鳥栖U18)
28 MF 滝口 晴斗(1年=サンフレッチェ広島ユース)
29 MF 末谷誓梧(1年=セレッソ大阪U18)
30 MF 田代紘(1年=ヴィッセル神戸U18)
8 FW 中野 歩(4年=ガンバ大阪ユース)
13 FW 中田 樹音(3年=岡山学芸館高)
【交代】
78分
▲中田樹音▼菅野翔斗
86分
▲石原央羅▼夏川大和
▲滝口晴斗▼楠瀬海
延長前半開始
▲中野歩▼西矢慎平
【スコア】
前半 1-1
後半 1-1
延長前半 0-0
延長後半 0-0
PK戦 4-3
結果 2-2 (4-3)
【試合内容】
初戦、準々決勝と同じ龍ケ崎フィールド、相手は本拠地とする関東5位の流通経済大。400人以上で埋め尽くされたホームスタンドに対して、神山から駆けつけた青と白の戦士たちも全力で声援を送る。福岡大戦の警告により出場停止の西村、負傷した大串もメガホンを叩く。
彼らの代わりには、小野、楠瀬が抜擢された。1年生ながらチームの危機に起用された小野は「正直プレッシャーは感じていた。それ以上に翔くんが負けたら終わるので、バトンを繋げるっていうことだけ意識して」と、重圧と覚悟の中で試合へ挑んだ。
冷たい風が吹き付ける中で試合開始のホイッスルが吹かれた。今季は立ち上がり厳しいが多い中、スタメン復帰となった菅野をターゲットに、両サイドの夏川、福井へとボールを散らす。7分、右サイドの深い位置をとった川上のパスを受けた食野から、西矢がロングシュートを放つ。16分にも同じ位置から積極的なシュート。食野が自由に動き回り、空いたスペースに川上、伊藤が飛び出す形も見せる。14分、クロスボールに対して飛び出した山本がこぼしたボールに反応されるも、横窪が右足で逸らし先制点を許さない。33分、相手キーパーのパスを食野が引っかけると、プレスをかけにきていた伊藤がそのままボールをさらい、ゴールへ流し込んだ。リーグ戦前期第3節からスタメンを張り続けているルーキーが、全国の舞台で数字を残した。
しかし、そう簡単に試合を運ばせてはくれないのが関東のチームだ。34分、右サイドからクロスが上げると、勢いのあるヘディングでゴール右横へ。36分、後方からの縦パスを叩くと、DFラインを抜け出す。京産大DF3人の猛追を振り切ると、間を詰めてきた山本に対しても、落ち着いてファーサイドを選択。わずか3分で試合は振り出しに戻った。その後も、スピード感あふれるドリブルとパス回しで我慢の時間が続く。前半は計8本のシュートを打ち込まれるも、最小失点で乗り切った。
後半の立ち上がり、上の空間を使ったパスで打開すると、食野がエリア内でボールを受ける。相手DFがマークを強める中、思い切って左足を振り抜くと、クロスバーを直撃。スタジアムがどよめいた。62分、4対4の状況で横窪が前へ釣り出され、強烈なシュートを放たれるが、川上の身を投げ出すブロックで枠外へ。なんとしても勝ち越しは許さない姿勢を見せ続ける。攻撃面では、丁寧かつ大胆に、トライ&エラーを繰り返しながら敵陣でのプレー時間を増やしていく。すると65分、クリアミスを川上が拾うと、食野がキープ。相手を引き寄せるようなフェイントを入れると、ペナルティアーク付近でフリーになっていた福井が、両手を開くジェスチャーを見せる。阿吽の呼吸で食野は相棒へと柔らかいパスを出し、得意の左足でゴールポストの外から内へと巻き付けるショットでニアサイドを見事に打ち抜いた。2試合連続でゴラッソを決めた福井。全国大会という大一番で自分の強みを生かしたパフォーマンスを発揮し続けている。
前半のような反撃は防ぎたい京産大は、よりリスクを回避する戦い方で時間を進めていく。しかし81分、山本がクロスボールを弾いたこぼれ球が、逆サイドのフリーになっていた選手へ渡る。西矢が対峙するが、カットインからゴール左側へ打ち込まれると、山本は反応できず、残り10分というところでまたも追いつかれた。会場全体が今日一番の盛り上がりをみせる。それでも、ここで一気に流れに呑まれないのが今年のチーム。まだ勝ち越されたわけではない。リーグ戦から1点差ゲームをモノにし続けた粘り強さは本物だ。スタンドの一角からは「京産が好きだから」のチャントが鳴り響く。決して焦りをみせることなく、相手の攻撃を跳ね返し、カウンターを狙う。ATは5分。GK山本は「前でいい」と、堅実にクリアすることを指示。西矢がクロスを上げたところで後半終了のホイッスルが鳴った。
悔しい思いをした関西選手権以来の延長戦。後半途中から足をつっていた西矢に代わって中野を投入。この寒さと前半から続く激しいぶつかり合いで疲労も見え始めた。そんな状況でもお互いに素早いカバーを的確に実行するイレブン。97分、チャンスが訪れる。中野のドリブルからFKを獲得。福井が蹴り込んだクロスはクリアされるも、右サイドから伊藤が大外で待っていた中田へクロス。中田は胸でトラップし左足でシュート。しかし、大きく右側へ逸れた。延長前半のATには、福井、食野のホットラインから中田を狙ったパスを出すも反応しきれず、スコアは動かず延長後半へ。109分、相手の左サイドからドリブルでPAに侵入されシュートを打たれるが、またも川上が身を挺して守り切った。
勝負はPK戦へと持ち込まれた。先行の京産大。先陣を切るのは川上。左下へ蹴り込んだが、相手キーパーに読まれ、失敗。この嫌な流れを止めたのは守護神山本だった。キッカーから見て右側へ飛んだ山本。両手で丁寧に止めきると、ベンチ、スタンドへガッツポーズ。
2人目のキッカー横窪は、ゴール右上の完璧なコースに決めきった。流経大の2人目に対しては、コースの読みは当たっていたものの、キッカーが上回り、成功。3人目の中野もキーパーの逆を突き、右側へ決める。後攻の3人目は、山本のタイミングをずらすような形で成功。続くは、PK戦では苦い思い出のある福井。それでも絶好調の福井は右上へ完璧に決めてみせた。止めれば大きく勝利が近づく流経大の4人目は、長い間を置くと、しっかりと沈めた。勝負の5人目、もちろんキッカーはキャプテン食野。流経大スタンドから響き渡る大きなブーイング。気にする素振りは全く見せない食野。笛が吹かれるとすぐさま助走を開始した。右上へ蹴り込んだ。京産大ベンチ、スタンドから歓声が上がると、両手ともに強く握り、仲間の歓声に応える。
止めれば決勝への道が開かれる5人目。キッカーは小刻みに助走をつけた。山本は右手を広げ、プレッシャーをかける。蹴り込むと同時に山本は左側へ。ボールはクロスバーの大きく上を通過した。大きな悲鳴と歓喜の声が響く龍ケ崎フィールド。大きく手を広げ、仲間を迎える守護神山本。ベンチから仲間たちが駆けつけ、歓喜の渦ができた。これまで苦しんできた延長、PK戦。ついに掴んだ日本一への挑戦権。食野の目には涙が溢れていた。
王者に相応しい戦いをしていることには間違いない。勝者のメンタリティを手にしつつあるが、全ては次の一戦で決まる。「翔のため」と全員が意気込み、勝利をもぎ取った。休養十分の西村がピッチへ帰還する。120分間戦い、中2日で迎える決勝戦。これほどの自信と実力をつけた京産大は、栄光の瞬間へ突き進む。(細井雅貴)
【試合後のインタビュー】
吉川監督
ー初の決勝進出
初の決勝進出っていうよりも、初のベスト4、準決勝進出だったんで、関西でも初優勝っていうところで。初っていうところは、もうあらゆるものをこの年の選手たちは、経験してきてるので、今シーズン、本当に最初から新たな歴史を積み上げる1年にしようっていう話をしてたので、自分たちが掲げている目標を1つずつ、手にしてる結果かなと思います。
ー西村選手を欠く中での試合
実を言うと今週の紅白戦の時は、3番の4年生の佐藤使ってたんですけども、昨日で佐藤と小野入れ替えるっていう決断して。1つは、横窪が、佐藤が出る時には左に回らないといけないっていうことがあったので、そうするとDFライン4枚が大きく変わるっていうことがあったので、佐藤もしっかりやってくれてたんですけども、DFラインのバランスっていうところを考えた時に、小野をチョイスしたって感じです。
ー小野選手のパフォーマンス
十分やってくれたと思います。今シーズン、本当にいろんな場面で、悔しい思いを持ってる選手。チャンスがなかなか来ない中で、チャンスが来た時になかなか勝ちに持っていけない、自分のミスで敗戦を経験してるっていう選手だったので、本当にこの大舞台で、しっかりと結果を残すことができたので、また彼にとってもすごく大きな一戦、成長につながる一戦だったと思います。
ー新たな歴史を積み上げるということを掲げての結果
それはもう全て日々の積み重ねっていうところが、1番かなって思ってます。勝っても負けても、色んなこと1年間あったんですけども、その中でも本当に隙なく、毎日のトレーニングで、こういうゲームのことを全員が意識しながら基準高く、隙なくっていうとこは、常にみんなで言いながらやってきたので、そこが本当に間違ってなかったっていう証明できてると思います。
ーPK戦の順番
PK戦の順番は、コーチに任せました。コーチに任せて見せた時に、 あとは選手たちでっていうのと、前日は、その時にピッチに立ってる4回生が、蹴りなさいっていう話はしてた。僕は、本当に4年生のチームだと思ってるので。僕のチームでも何でもなくて、本当に4年生のチームっていうことを常々言い続けてるので、最後5人目で食野が外したとしても、それはもう納得できる。4年生がいけるっていう中で、ちょっと自信ない4年生は少し後っていう感じで。そんな順番の決め方でした。
ーPK戦で食野選手が出てくるのが遅かったが、5番目ということも含め
決まってました。多分、ウェアを脱ぐ時間がちょっとかかっただけだと思います。ちょっと嫌な間はあったんですけど。
ー戦い方
大串、西村がいなかったので、 少しビルドアップっていうところは、今まで自分たちが積み上げてきた中で言うと、割合的には2割、3割減ぐらいかなっていうところで、先頭に菅野を今回は選択した中で、相手の2CBと、多少アバウトなボールが入っても、ビルドアップが自分たちのやりたいことできなくても、そこをターゲットにしながら、2CBを疲弊させるっていうところも、ゲームプランでは持ってたので、もう少しボールは持ちたかったっていうところは、本来の思いではあるんですけど、ただ今日のゲームを勝つっていうところと、出場停止、怪我人とかっていうところ含めた中では、本当に今できる最善を尽くしてのゲームプラン、選手起用だったかなと思います。
ー1年生の伊藤翼選手の評価
今日のパフォーマンスは、本当にパーフェクトに近い内容だったかなって思います。彼には、その中でもアシストや得点っていうところを求めてたんですけど、今日は得点ってところも結びついて。見て分かる通り120分やっても、パフォーマンスが落ちないというか。波がないっていうところは、春先のいろんな遠征とか、合宿とか、リーグ戦とかも含めて、そこのタフさっていうのは、本当に1年生ではないような、ずっとリーグ戦に出てるようなプレーぶりかなっていう風に思うので、こういう経験を今、1年生の段階でできてるので、さらに飛躍して、もっともっと大きな場所に、彼が行くことを期待しながら今後も見守りたい。
ーボールをつなぐスタイルへの考え方
人を魅了するアグレッシブなアタッキングフットボールっていうところを掲げてますので、もちろんボールつないで、今年のチームで言うと、クオリティ高い選手が揃ってますので、そういったところをチョイスしてるんですけども、今回のシーンでも、ゴールの最後、ゴールラインを割るまで、体投げ出してとか、スライディングしてとか、ゴールキーパー出てるけど、最後フィールドプレイヤーが、ボール掻き出すとか、そういったところも僕自身は大事にしてる部分なので、本当につなぐっていう部分で言うと、チームスタイルにはなるんですけども、あらゆる面で、人を見てる人が、ワクワクとか、この選手すごいなっていう風に、ポジティブな感情を与えられるようなサッカーしたいなっていう風に思ってます。その中で、今年の選手たちのクオリティ見た中では、ボールをつなぐっていうところに重きを置いて、1番それが彼らのストロングというか、強みが出るなっていうところで、選択させてもらっている。
ー決勝の相手は明治大学
僕の記憶というか、僕が知ってる限りは、初対戦になると思うんで、本当に伝統あるというか、もう皆さんご存じの通りっていうところと、京産どこどこ?っていう、それは当然だと思うので、そこを覆すというか、それを積み重ねていける今年の1年にしようっていうところなんで、それは本当に10年、20年じゃ多分、明治さんとか、伝統校に追いつくことは、なかなか難しいと思うんです。ただ、スタート切らないと、伝統校に肩を並べるとか、追い越すっていうことはできないと思うんで、そういった意味では、決勝戦の相手に不足なしというところだと思うので、自分たちはしっかりとやってきたことを出せればなと。
ー関東相手に関西のサッカーが通用している
そうですね。インカレに出る時に、関西第1代表で出るっていう思いと、関西のチームがやっぱり負けてしまって、自分たちしかいないっていうところで、勝てば勝つほど、関西のいろんな方の思いを背負ってっていうのが、ほんとに1個1個、東洋さん、今回も流経さんの思いをまた背負ってっていうところがあると思うので、そういったところで言うと、関西のインカレ破れてしまった3チーム、関西の学生リーグの大学の思いをしっかりと背負って、自分たちが表現する権利があると思いますし、そういったところは責任があると思うんで、相手どうこう、もちろん関東とか地域性のところはあると思うんですけども、ただ自分たちが背負ってるのはやっぱり関西代表だっていう、第1代表だっていうところの責任をしっかりと持って、今日みたいにPK戦までもつれても、最後の最後まで、しっかりと戦いたいなと思います。
ー監督就任初年度からの快進撃
以前までのっていうところは、ちょっとわからない部分でもあるんですけども、さっきも言わしてもらった通り、日々の積み重ね、日々のトレーニングっていうところは、選手たちには、本当に厳しいトレーニングっていうところは、曜日ごとに、どういう内容でやるっていうのを設定して、毎週毎週、試合に向けてやってますので、そういったところで、週1回、必ず10キロ近く走る、スプリントも20から多い時、30分ぐらい行くようなトレーニングが、中日、水曜日とか、木曜日に設定されてるんですけど、そういったところで結果に繋がってるっていうところは、1つあるかなっていう風に思うんですけど、選手たちを成長させたいっていうのが、やっぱり1番あるので、まだまだ彼らはあの上でやらないといけないしっていうところで言うと、大学生でっていうよりも、調整、調整っていうよりも、まあ鍛えて勝っていくっていうところは、頭に入れながら指導をしてる。 あとは、今まで積み上げ入れてきてもらったスタッフの方だったりOBだったり、本当にいろんな方々のご尽力とか、その積み重ねが今年花開いてるのかなっていう形なので、たまたま僕が1年目、就任さしてもらってるっていう巡り合わせも含めてなんで、今までの方々の積み上げが実ってきてるっていうところだと思います。
ー楠瀬選手のスタメン起用
それも日々のっていうか、今週、今日迎えるまでの紅白戦のところで、滝口を最初スタートで使って右で、西矢を左っていうところで回してたんですけど、紅白戦のところだったり、トレーニングのところ見てると、少し自信がなさげという、自信ないような形でプレーしてるのが、ちょっと気になったっていうところがあったので、今週の紅白戦で選択をした中で、西矢も元々はやっぱり右サイドで、福井との縦関係でやるのが1番生きるっていうポジションではあるんですけど、大串がいるから左に回ってたっていうところがあるので、元々の場所に戻ったっていうところがあるかなと思います。
【取材:細井雅貴】
準決勝 流通経済大戦(2023年12月21日)
複数の主力選手を欠く中で挑んだ準決勝は、前後半ともにリードするも、追いつかれる展開となり、延長戦へ。互角の戦いで勝負はPK戦へと持ち越された。最後は流経大5人目のキッカーが外し、決勝への切符を掴み取った。
【スターティングメンバー】
1 GK 山本 透衣(4年=コンサドーレ札幌U18・FC大阪内定)
2 DF 西矢 慎平(4年=神戸弘陵学園高・カターレ富山内定)
5 DF 横窪 皇太(3年=金光大阪高)
24 DF 小野 成夢(1年=愛媛FC U-18)
25 DF 楠瀬 海(3年=高知高)
6 MF 川上 陽星(4年=作陽高)
20 MF 伊藤 翼(1年=セレッソ大阪U18)
7 MF 福井 和樹(4年=ガンバ大阪ユース・SC相模原内定)
10 MF 食野 壮磨(4年=ガンバ大阪ユース・東京ヴェルディ内定)
11 MF 夏川 大和(4年=草津東高・FC大阪内定)
9 FW 菅野 翔斗(3年=サンフレッチェ広島ユース)
【サブメンバー】
12 GK 林 憲太朗(3年=滝川第二高)
3 DF 佐藤 幸生(4年=サンフレッチェ広島ユース)
14 MF 城水 晃太(3年=サンフレッチェ広島ユース)
15 MF 石原 央羅(3年=サガン鳥栖U18)
28 MF 滝口 晴斗(1年=サンフレッチェ広島ユース)
29 MF 末谷誓梧(1年=セレッソ大阪U18)
30 MF 田代紘(1年=ヴィッセル神戸U18)
8 FW 中野 歩(4年=ガンバ大阪ユース)
13 FW 中田 樹音(3年=岡山学芸館高)
【交代】
78分
▲中田樹音▼菅野翔斗
86分
▲石原央羅▼夏川大和
▲滝口晴斗▼楠瀬海
延長前半開始
▲中野歩▼西矢慎平
【スコア】
前半 1-1
後半 1-1
延長前半 0-0
延長後半 0-0
PK戦 4-3
結果 2-2 (4-3)
【試合内容】
初戦、準々決勝と同じ龍ケ崎フィールド、相手は本拠地とする関東5位の流通経済大。400人以上で埋め尽くされたホームスタンドに対して、神山から駆けつけた青と白の戦士たちも全力で声援を送る。福岡大戦の警告により出場停止の西村、負傷した大串もメガホンを叩く。
彼らの代わりには、小野、楠瀬が抜擢された。1年生ながらチームの危機に起用された小野は「正直プレッシャーは感じていた。それ以上に翔くんが負けたら終わるので、バトンを繋げるっていうことだけ意識して」と、重圧と覚悟の中で試合へ挑んだ。
冷たい風が吹き付ける中で試合開始のホイッスルが吹かれた。今季は立ち上がり厳しいが多い中、スタメン復帰となった菅野をターゲットに、両サイドの夏川、福井へとボールを散らす。7分、右サイドの深い位置をとった川上のパスを受けた食野から、西矢がロングシュートを放つ。16分にも同じ位置から積極的なシュート。食野が自由に動き回り、空いたスペースに川上、伊藤が飛び出す形も見せる。14分、クロスボールに対して飛び出した山本がこぼしたボールに反応されるも、横窪が右足で逸らし先制点を許さない。33分、相手キーパーのパスを食野が引っかけると、プレスをかけにきていた伊藤がそのままボールをさらい、ゴールへ流し込んだ。リーグ戦前期第3節からスタメンを張り続けているルーキーが、全国の舞台で数字を残した。
しかし、そう簡単に試合を運ばせてはくれないのが関東のチームだ。34分、右サイドからクロスが上げると、勢いのあるヘディングでゴール右横へ。36分、後方からの縦パスを叩くと、DFラインを抜け出す。京産大DF3人の猛追を振り切ると、間を詰めてきた山本に対しても、落ち着いてファーサイドを選択。わずか3分で試合は振り出しに戻った。その後も、スピード感あふれるドリブルとパス回しで我慢の時間が続く。前半は計8本のシュートを打ち込まれるも、最小失点で乗り切った。
後半の立ち上がり、上の空間を使ったパスで打開すると、食野がエリア内でボールを受ける。相手DFがマークを強める中、思い切って左足を振り抜くと、クロスバーを直撃。スタジアムがどよめいた。62分、4対4の状況で横窪が前へ釣り出され、強烈なシュートを放たれるが、川上の身を投げ出すブロックで枠外へ。なんとしても勝ち越しは許さない姿勢を見せ続ける。攻撃面では、丁寧かつ大胆に、トライ&エラーを繰り返しながら敵陣でのプレー時間を増やしていく。すると65分、クリアミスを川上が拾うと、食野がキープ。相手を引き寄せるようなフェイントを入れると、ペナルティアーク付近でフリーになっていた福井が、両手を開くジェスチャーを見せる。阿吽の呼吸で食野は相棒へと柔らかいパスを出し、得意の左足でゴールポストの外から内へと巻き付けるショットでニアサイドを見事に打ち抜いた。2試合連続でゴラッソを決めた福井。全国大会という大一番で自分の強みを生かしたパフォーマンスを発揮し続けている。
前半のような反撃は防ぎたい京産大は、よりリスクを回避する戦い方で時間を進めていく。しかし81分、山本がクロスボールを弾いたこぼれ球が、逆サイドのフリーになっていた選手へ渡る。西矢が対峙するが、カットインからゴール左側へ打ち込まれると、山本は反応できず、残り10分というところでまたも追いつかれた。会場全体が今日一番の盛り上がりをみせる。それでも、ここで一気に流れに呑まれないのが今年のチーム。まだ勝ち越されたわけではない。リーグ戦から1点差ゲームをモノにし続けた粘り強さは本物だ。スタンドの一角からは「京産が好きだから」のチャントが鳴り響く。決して焦りをみせることなく、相手の攻撃を跳ね返し、カウンターを狙う。ATは5分。GK山本は「前でいい」と、堅実にクリアすることを指示。西矢がクロスを上げたところで後半終了のホイッスルが鳴った。
悔しい思いをした関西選手権以来の延長戦。後半途中から足をつっていた西矢に代わって中野を投入。この寒さと前半から続く激しいぶつかり合いで疲労も見え始めた。そんな状況でもお互いに素早いカバーを的確に実行するイレブン。97分、チャンスが訪れる。中野のドリブルからFKを獲得。福井が蹴り込んだクロスはクリアされるも、右サイドから伊藤が大外で待っていた中田へクロス。中田は胸でトラップし左足でシュート。しかし、大きく右側へ逸れた。延長前半のATには、福井、食野のホットラインから中田を狙ったパスを出すも反応しきれず、スコアは動かず延長後半へ。109分、相手の左サイドからドリブルでPAに侵入されシュートを打たれるが、またも川上が身を挺して守り切った。
勝負はPK戦へと持ち込まれた。先行の京産大。先陣を切るのは川上。左下へ蹴り込んだが、相手キーパーに読まれ、失敗。この嫌な流れを止めたのは守護神山本だった。キッカーから見て右側へ飛んだ山本。両手で丁寧に止めきると、ベンチ、スタンドへガッツポーズ。
2人目のキッカー横窪は、ゴール右上の完璧なコースに決めきった。流経大の2人目に対しては、コースの読みは当たっていたものの、キッカーが上回り、成功。3人目の中野もキーパーの逆を突き、右側へ決める。後攻の3人目は、山本のタイミングをずらすような形で成功。続くは、PK戦では苦い思い出のある福井。それでも絶好調の福井は右上へ完璧に決めてみせた。止めれば大きく勝利が近づく流経大の4人目は、長い間を置くと、しっかりと沈めた。勝負の5人目、もちろんキッカーはキャプテン食野。流経大スタンドから響き渡る大きなブーイング。気にする素振りは全く見せない食野。笛が吹かれるとすぐさま助走を開始した。右上へ蹴り込んだ。京産大ベンチ、スタンドから歓声が上がると、両手ともに強く握り、仲間の歓声に応える。
止めれば決勝への道が開かれる5人目。キッカーは小刻みに助走をつけた。山本は右手を広げ、プレッシャーをかける。蹴り込むと同時に山本は左側へ。ボールはクロスバーの大きく上を通過した。大きな悲鳴と歓喜の声が響く龍ケ崎フィールド。大きく手を広げ、仲間を迎える守護神山本。ベンチから仲間たちが駆けつけ、歓喜の渦ができた。これまで苦しんできた延長、PK戦。ついに掴んだ日本一への挑戦権。食野の目には涙が溢れていた。
王者に相応しい戦いをしていることには間違いない。勝者のメンタリティを手にしつつあるが、全ては次の一戦で決まる。「翔のため」と全員が意気込み、勝利をもぎ取った。休養十分の西村がピッチへ帰還する。120分間戦い、中2日で迎える決勝戦。これほどの自信と実力をつけた京産大は、栄光の瞬間へ突き進む。(細井雅貴)
【試合後のインタビュー】
吉川監督
ー初の決勝進出
初の決勝進出っていうよりも、初のベスト4、準決勝進出だったんで、関西でも初優勝っていうところで。初っていうところは、もうあらゆるものをこの年の選手たちは、経験してきてるので、今シーズン、本当に最初から新たな歴史を積み上げる1年にしようっていう話をしてたので、自分たちが掲げている目標を1つずつ、手にしてる結果かなと思います。
ー西村選手を欠く中での試合
実を言うと今週の紅白戦の時は、3番の4年生の佐藤使ってたんですけども、昨日で佐藤と小野入れ替えるっていう決断して。1つは、横窪が、佐藤が出る時には左に回らないといけないっていうことがあったので、そうするとDFライン4枚が大きく変わるっていうことがあったので、佐藤もしっかりやってくれてたんですけども、DFラインのバランスっていうところを考えた時に、小野をチョイスしたって感じです。
ー小野選手のパフォーマンス
十分やってくれたと思います。今シーズン、本当にいろんな場面で、悔しい思いを持ってる選手。チャンスがなかなか来ない中で、チャンスが来た時になかなか勝ちに持っていけない、自分のミスで敗戦を経験してるっていう選手だったので、本当にこの大舞台で、しっかりと結果を残すことができたので、また彼にとってもすごく大きな一戦、成長につながる一戦だったと思います。
ー新たな歴史を積み上げるということを掲げての結果
それはもう全て日々の積み重ねっていうところが、1番かなって思ってます。勝っても負けても、色んなこと1年間あったんですけども、その中でも本当に隙なく、毎日のトレーニングで、こういうゲームのことを全員が意識しながら基準高く、隙なくっていうとこは、常にみんなで言いながらやってきたので、そこが本当に間違ってなかったっていう証明できてると思います。
ーPK戦の順番
PK戦の順番は、コーチに任せました。コーチに任せて見せた時に、 あとは選手たちでっていうのと、前日は、その時にピッチに立ってる4回生が、蹴りなさいっていう話はしてた。僕は、本当に4年生のチームだと思ってるので。僕のチームでも何でもなくて、本当に4年生のチームっていうことを常々言い続けてるので、最後5人目で食野が外したとしても、それはもう納得できる。4年生がいけるっていう中で、ちょっと自信ない4年生は少し後っていう感じで。そんな順番の決め方でした。
ーPK戦で食野選手が出てくるのが遅かったが、5番目ということも含め
決まってました。多分、ウェアを脱ぐ時間がちょっとかかっただけだと思います。ちょっと嫌な間はあったんですけど。
ー戦い方
大串、西村がいなかったので、 少しビルドアップっていうところは、今まで自分たちが積み上げてきた中で言うと、割合的には2割、3割減ぐらいかなっていうところで、先頭に菅野を今回は選択した中で、相手の2CBと、多少アバウトなボールが入っても、ビルドアップが自分たちのやりたいことできなくても、そこをターゲットにしながら、2CBを疲弊させるっていうところも、ゲームプランでは持ってたので、もう少しボールは持ちたかったっていうところは、本来の思いではあるんですけど、ただ今日のゲームを勝つっていうところと、出場停止、怪我人とかっていうところ含めた中では、本当に今できる最善を尽くしてのゲームプラン、選手起用だったかなと思います。
ー1年生の伊藤翼選手の評価
今日のパフォーマンスは、本当にパーフェクトに近い内容だったかなって思います。彼には、その中でもアシストや得点っていうところを求めてたんですけど、今日は得点ってところも結びついて。見て分かる通り120分やっても、パフォーマンスが落ちないというか。波がないっていうところは、春先のいろんな遠征とか、合宿とか、リーグ戦とかも含めて、そこのタフさっていうのは、本当に1年生ではないような、ずっとリーグ戦に出てるようなプレーぶりかなっていう風に思うので、こういう経験を今、1年生の段階でできてるので、さらに飛躍して、もっともっと大きな場所に、彼が行くことを期待しながら今後も見守りたい。
ーボールをつなぐスタイルへの考え方
人を魅了するアグレッシブなアタッキングフットボールっていうところを掲げてますので、もちろんボールつないで、今年のチームで言うと、クオリティ高い選手が揃ってますので、そういったところをチョイスしてるんですけども、今回のシーンでも、ゴールの最後、ゴールラインを割るまで、体投げ出してとか、スライディングしてとか、ゴールキーパー出てるけど、最後フィールドプレイヤーが、ボール掻き出すとか、そういったところも僕自身は大事にしてる部分なので、本当につなぐっていう部分で言うと、チームスタイルにはなるんですけども、あらゆる面で、人を見てる人が、ワクワクとか、この選手すごいなっていう風に、ポジティブな感情を与えられるようなサッカーしたいなっていう風に思ってます。その中で、今年の選手たちのクオリティ見た中では、ボールをつなぐっていうところに重きを置いて、1番それが彼らのストロングというか、強みが出るなっていうところで、選択させてもらっている。
ー決勝の相手は明治大学
僕の記憶というか、僕が知ってる限りは、初対戦になると思うんで、本当に伝統あるというか、もう皆さんご存じの通りっていうところと、京産どこどこ?っていう、それは当然だと思うので、そこを覆すというか、それを積み重ねていける今年の1年にしようっていうところなんで、それは本当に10年、20年じゃ多分、明治さんとか、伝統校に追いつくことは、なかなか難しいと思うんです。ただ、スタート切らないと、伝統校に肩を並べるとか、追い越すっていうことはできないと思うんで、そういった意味では、決勝戦の相手に不足なしというところだと思うので、自分たちはしっかりとやってきたことを出せればなと。
ー関東相手に関西のサッカーが通用している
そうですね。インカレに出る時に、関西第1代表で出るっていう思いと、関西のチームがやっぱり負けてしまって、自分たちしかいないっていうところで、勝てば勝つほど、関西のいろんな方の思いを背負ってっていうのが、ほんとに1個1個、東洋さん、今回も流経さんの思いをまた背負ってっていうところがあると思うので、そういったところで言うと、関西のインカレ破れてしまった3チーム、関西の学生リーグの大学の思いをしっかりと背負って、自分たちが表現する権利があると思いますし、そういったところは責任があると思うんで、相手どうこう、もちろん関東とか地域性のところはあると思うんですけども、ただ自分たちが背負ってるのはやっぱり関西代表だっていう、第1代表だっていうところの責任をしっかりと持って、今日みたいにPK戦までもつれても、最後の最後まで、しっかりと戦いたいなと思います。
ー監督就任初年度からの快進撃
以前までのっていうところは、ちょっとわからない部分でもあるんですけども、さっきも言わしてもらった通り、日々の積み重ね、日々のトレーニングっていうところは、選手たちには、本当に厳しいトレーニングっていうところは、曜日ごとに、どういう内容でやるっていうのを設定して、毎週毎週、試合に向けてやってますので、そういったところで、週1回、必ず10キロ近く走る、スプリントも20から多い時、30分ぐらい行くようなトレーニングが、中日、水曜日とか、木曜日に設定されてるんですけど、そういったところで結果に繋がってるっていうところは、1つあるかなっていう風に思うんですけど、選手たちを成長させたいっていうのが、やっぱり1番あるので、まだまだ彼らはあの上でやらないといけないしっていうところで言うと、大学生でっていうよりも、調整、調整っていうよりも、まあ鍛えて勝っていくっていうところは、頭に入れながら指導をしてる。 あとは、今まで積み上げ入れてきてもらったスタッフの方だったりOBだったり、本当にいろんな方々のご尽力とか、その積み重ねが今年花開いてるのかなっていう形なので、たまたま僕が1年目、就任さしてもらってるっていう巡り合わせも含めてなんで、今までの方々の積み上げが実ってきてるっていうところだと思います。
ー楠瀬選手のスタメン起用
それも日々のっていうか、今週、今日迎えるまでの紅白戦のところで、滝口を最初スタートで使って右で、西矢を左っていうところで回してたんですけど、紅白戦のところだったり、トレーニングのところ見てると、少し自信がなさげという、自信ないような形でプレーしてるのが、ちょっと気になったっていうところがあったので、今週の紅白戦で選択をした中で、西矢も元々はやっぱり右サイドで、福井との縦関係でやるのが1番生きるっていうポジションではあるんですけど、大串がいるから左に回ってたっていうところがあるので、元々の場所に戻ったっていうところがあるかなと思います。
【取材:細井雅貴】