10月30日、関西地区代表決定戦が南港中央公園野球場で行われた。京産大は神宮出場へ最後の切符である第2代表の座をかけ関国大と激突した。
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京産大 001000001 = 2
関国大 000000021×= 3


【試合成績】
1中堅手 山本(鳥取城北) 3打数1安打1打点1四球
2遊撃手 宇都宮(宇和島東) 4打数0安打
3左翼手 杉野(近江) 3打数1安打
左翼手 田井中(福知山成美) 1打数0安打
4一塁手 西元(福知山成美) 4打数0安打
5右翼手 川岸(京都成章) 4打数1安打
 代走 片山(高松商業)
 右翼手 間部(金光学園)
6捕手 横山(龍谷大平安) 4打数1安打1打点
7.三塁手 笹原(福知山成美) 2打数1安打1四球
8二塁手 酒井(桜宮) 1打数0安打
9投手 川辺(東山) 2打数0安打
 投手 長谷川(藤蔭)
 投手 北山(京都成章)1打数0安打


 神宮行き最後の切符をかけ京産大は壮絶な試合を繰り広げた。相手は初戦で完封負けを喫している関国大。このときと同様、関国大の先発のマウンドには武次がいた。完封負けのリベンジを果たし、神宮行き決めると京産大の選手は気合十分。しかし簡単にはいかなかった。
 先制点を挙げたのは京産大。3回表に先頭の7番笹原がセカンドゴロで一塁へヘッドスライディング。判定はセーフ笹原が吠えた。気迫でもぎ取った無死1塁のチャンス。活かさないわけにはいかない。続く8番酒井は送りバント、9番川辺は進塁打を放って二死3塁とした。ここで打席には1番山本が入る。セカンドへの内野安打で1点を先制した。関西地区代表決定戦4日目にして初めての先制点。“神宮に行きたい”選手たちの強い思いでもぎ取った1点だった。試合前日に笹原は「トップレベルの投手」と語るなど、なかなか得点することが難しいのはわかっていた。外野まで打球が飛ばなくとも得点できるのが野球。選手は全力だった。
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 京産大の先発マウンドにあがったのは川辺。「明日は任せるぞ」チームメイトに言われていた。粘りの投球を貫く。川辺は初回のピンチを凌ぐなど6回3分の1を無失点と試合を作る。3回表に先制点を奪ったもののその後はなかなか得点を奪うことができず、川辺、武次の投げ合いとなった。
 1-0のまま迎えた8回裏、京産大のマウンドにはリーグ戦からフル回転を続ける北山がマウンドに上がっていた。一死満塁からヒットと犠飛で2点を奪われ、逆転されてしまった。だが粘って粘って粘って追いついてここまできた京産大がこのまま終わるわけがない。1点を追いかける9回表二死から5番川岸がセンター前ヒットで出塁。勝村監督は迷わず、片山を代走に送る。アウトになればそこで試合終了。それでも初球に左腕・武次から完璧なスタートで盗塁を決める。「片山が決めて楽になった。もう一度北山をマウンドへ」と打席の主将横山は思っていた。横山はツーストライクと追い込まれてから、ここまで苦しめられてきたスライダーを捉える。片山は快足を飛ばして2塁から一気にホームへ。横山が意地の一打を放って土壇場で同点に追いついた。

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 9回裏を0に抑えて延長戦に持ち込みたい京産大。北山は二死までは順調にアウトを重ねた。だが野球の神様は神宮行きを認めてくれなかった。関国大の2番打者の大飛球はライトスタンドへ、サヨナラホームランを浴びた。マウンドでは北山が膝に手を置きうなだれ、選手の目からは涙がこぼれた。マウンドの北山に真っ先に駆け寄り「大丈夫だ」と声をかける湯川(投手リーダー)。「北山で打たれたなら仕方ない」と語る横山。4回生は最後の最後まで下級生を支えチームを引っ張った。
 春リーグ勝ち点2しか奪えなかったチームが、全国大会まであと一歩のところまで勝てるチームになった。実はこの秋(リーグ戦、関西地区代表決定戦)の12勝中7勝が逆転勝ち。先制されても最後まで絶対に諦めず逆転するマインドは結果にも現れていた。試合後勝村監督は「よくここまで成長した」と粘り強く戦った選手を称えた。
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勝村法彦監督
「厳しいゲームばかり、勝たせてやれなかった。悔しいですね。北山も厳しいところばかりに登板して抑えてくれていた。イニングはそんなに投げてないが、厳しい場面で出て行っている。長谷川も含め一年生がよくやってくれた。横山を中心にやってきて、リーグ戦も厳しいゲームばかりだったが、粘り強く戦うことができた。本当に成長した。関西地区代表選手権はラスト3戦、ここまで粘ることができた。
川辺はいけるとこまでと思っていた。ボールが浮き始めたので交代した。(初戦で完封負けしている相手)スライダーはだいぶ見切っていた。ストレートを狙っていこうと話していたが、2回からは変化球が多くなった。
片山には2球目までに行けと言ってあった。本当によく走った。横山もよく打ってくれた。最後は4回生がしっかり見せてくれた。リーグ開幕当初は怪我人が多くいて、、、よくここまで諦めずにやったと思う。力がついてきた。下級生はいまの4回生の姿をしっかり見ている。応援団など学校の関係者が全試合足を運んでくれた。最後は神宮に行けず申し訳ない。」
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河本優佑主務
「歴代で一番、監督さんに反抗した主務だと思う。それでも飽きずに何度も正面から向き合ってくれた。4シーズンも主務を務めさせてもらった。監督さんがよく誰からも応援されるチームになろうと言っている。監督や平山コーチ、光原コーチが学生自身がどんな場面でも必ず声をかけてくれて、あきらめずにやれるいいチームだと思う。
自分の下にはマネージャーがいなくて不安な部分もあったが、2人入ってきて成長してくれた。本当に今のマネージャー陣はしっかりしてくれている。人材を残していけと言われてきて、いいマネージャー陣になって優勝できたのは、いい経験できたと思う。自分が入った時、竹林さんがいた時はマネージャーのマの字もわからない状態だった。そのあと遠藤さんとはぶつかり合いながらも2人で見直していった。後輩の自分が言うのは変だが、お互い1:1で尊敬しあえる関係。いまは後輩マネージャーと尊敬しあえる関係になった。信頼している。」
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横山裕也主将
「(9回表同点打)北山にはずっと助けてもらっていた。8回に2点取られて、捕手としてもう一度北山を投げさせたいと思った。自分で決めてやろうと言うのではなく後ろに繋ごうと。片山が盗塁を決めてくれて気持ちが楽になった。打ったのはスライダー、狙っていたのではなく来た球に反応した。本当に無心で、スライダーを打ったことは覚えているが、、、声援が力になったんだと思う。同点にして9回に繋げられた。
(9回裏のサヨナラのシーン)二死取ってから北山のまっすぐをあれだけ完璧に捉えられたら仕方ない。北山はこれからもっとすごい投手になる。期待している。
春は勝ち点2で監督さんからは弱いチームということを言われてしまった。力と経験は十分ある。秋に向かう中で関東遠征はここまで強くなった1つの要因になった。同じ学生なのに動きが違う。自分たちのやれることをやっていこうと言うことでやってきた。
関西六大学野球の代表として最後は戦ったが、神宮に行けなくて申し訳ない。
(後輩へ)下級生に助けられた。また成長も見ることができた。メンバー内外関係なく激しい競争をして欲しい。素質はある。
自分たちの代はセンターラインが揃っていて、監督さんからもこの代で日本一ということを期待されてきた。神宮には行けなかったが、最低限のリーグ優勝はできてよかった。一番上の学年の力があった。あと今年から光原さんがコーチになり、練習から手を抜くなと言われてきた。成功者の体験としてビハインドの場面からひっくり返せる。粘り強く勝てる。いい部分を引き継いで欲しい。」
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川辺凛投手
「結構悪かった。変化球がいかないのでストレートしか投げられなかった。和歌山大戦の時に打たれ、横山から次は抑えられるようにしとけと言われていた。昨日関西国際大とのリベンジが決まり、明日は任すぞとチームメイトから言われた。(初回のピンチを無失点に抑える)先制点を与えたらだめと思っていて、西元のお陰で落ち着けたし、あのプレーはとても大きい。(横山選手の同点タイムリーヒット)片山が盗塁して、横山が打ってくれて、4回生が活躍してくれて4年間やってきてよかったと思った。僕はゲガもして、もうマウンドに立てないかと思っていたが、横山とバッテリーを組めてよかったし、本当に頼りになるキャプテン。(4年間を振り返って)2回生の時全国大会に出場し1回戦で敗退したが、マウンドに立たせてくれてありがとうとみんなには感謝している。(後輩へ)僕も先輩に全国大会へ連れて行ってもらったので、みんなを連れて行きたかった。この悔しさを忘れず、後輩たちには全国へ行ってほしい」
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長谷川希望投手
「関西選手権では自分の力を発揮できず、チームに迷惑をかけた。悔いが残る。これからは自分の取り組みを続けるとともに、もっと精度を上げていきたい。横山さんには迷惑しかかけていないが、横山さんのおかげで今の自分がいる。感謝しています。4回生が残したものを受け継ぎつつ、変えるところは変えていって、来年の春全国に行って4回生の方々に報告したい。」
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 神宮大会出場は叶わなかったが、京産大は誰からも愛されるチームになった。以前、勝村監督は「何も知らずに球場にきたお客さんが、京産大の選手をみて応援してくれるようなチームにしたい」と語っていた。今秋は全試合に大学の応援団が来るなど、硬式野球部はどこのチームよりも応援され続けてきた。応援団も決して誰かに言われて毎試合応援にきていたわけではない。「野球の日程が出たときに、全部いけるじゃん。行こ!って」と自分たちで決めていた。屋外で2時間近くも声援を送り続けることは簡単ではない。平日開催の試合でも、他の部活と日程がかぶっても行けるメンバーをかき集めた。最終戦、9回表横山の同点打は「無心で来た球を振った。声援が力になった」(横山)と応援が打たせた一打だったのかもしれない。“愛され、応援されるチーム”には野球の技術だけでない力が存在する。この力はどんなときでも手を抜かず全力プレーを魅せる選手たちが手に入れた最高の武器だ。どのポジションにも選手が揃っており、日本一を期待され入学してきた現4回生。4年間で全国大会出場は1回だけに留まるも、諦めず粘り強く戦うことで“愛され、応援されるチーム”を作った功績は大きい。チーム目標である日本一は4回生の姿をみてきた後輩に託された。
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