第101回 関西学生サッカーリーグ(後期)
第10節 関西大戦(2023年11月5日)

勝てば優勝が決まる大一番。首位・京産大、2位・関西大の頂上決戦、前半に西村の得点で先制に成功するも、後半ロスタイムに失点。前期と同じく悔しさの残るドローで優勝決定は最終節に持ち込まれた。
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【スターティングメンバー】
1 GK 山本 透衣(4年=コンサドーレ札幌U18)
16 DF 大串 昇平(3年=ガンバ大阪ユース)
5 DF 横窪 皇太(3年=金光大阪高)
4 DF 西村 翔(4年=ガンバ大阪ユース)
2 DF 西矢 慎平(4年=神戸弘陵学園高・カターレ富山内定)
6 MF 川上 陽星(4年=作陽高)
32 MF 伊藤 翼(1年=セレッソ大阪U18)
7 MF 福井 和樹(4年=ガンバ大阪ユース・SC相模原内定)
10 MF 食野 壮磨(4年=ガンバ大阪ユース・東京ヴェルディ内定)
11 MF 夏川 大和(4年=草津東高)
13 FW 中田 樹音(3年=岡山学芸館高)

【サブメンバー】
12 GK 林 憲太朗(3年=滝川第二高)
3 DF 佐藤 幸生(4年=サンフレッチェ広島ユース)
25 DF 楠瀬 海(3年=高知高)
15 MF 石原 央羅(3年=サガン鳥栖U-18)
18 MF 掛見 直央(3年=東山高)
28 MF 滝口 晴斗(1年=サンフレッチェ広島ユース)
29 MF 末谷 誓梧(1年=セレッソ大阪U-18)
8 FW 中野 歩(4年=ガンバ大阪ユース)
49 FW 新川翔太(3年=長崎創成館高)

【交代】
後半31分
中野歩中田樹音
後半35分
佐藤幸生食野壮磨
後半45分
楠瀬海夏川大和

【スコア】
前半 1-0
後半 0-1
結果 1-1

【試合内容】
いよいよ、この舞台まで上り詰めた。勝てば優勝が決まる天王山、誰一人として経験したことのない大一番だ。前節同志社大に勝利し、優勝遠のく連敗から復活の連勝を果たした京産大。プレッシャーのかかる試合の前でもやることは変わらない。「90分間を全力で戦い抜く」。試合前の吉川監督、主将の食野から言葉が聞こえて来る。勝利後の栄光を描くのではなく、まずは90分で勝利することを意識して京都から遠く離れた熊取、大阪体育大学に乗り込んだ。
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アップ中に漂う雰囲気は大一番を前にしても変わらなかった。リラックスしながらも、スイッチが入ると真剣な眼差しに変化。良い緊張感で身体を温めていると、Bチームの4年次生、中野領太(4年=京産大付属高)、舞田翼(4年=京産大付属高)の姿が。BCチームもバスに乗って応援に駆け付けた。2人の姿を見つけると、嬉しそうな笑顔を浮かべ、グーのポーズでタッチを交わすAチームの4年次生たち。同期からのエールを受け、試合開始を迎えた。
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スタメンは前節と固定のメンバー「常に最善のメンバーを」と話していた吉川監督。攻守ともに多くの試合で経験を積み、実力を備えた面々が並んだ。集合写真撮影時、恒例の西矢の掛け声。「さぁ今日も“全員”で勝ちましょう!54321!」。ピッチに立つ者だけではなく、スタッフ、応援も含めて“全員”で勝つ。熱い思いを胸に円陣を組み、京産大のキックで試合が始まった。
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立ち上がりの失点が課題となっている京産大。連敗を喫した試合では立ち上がりに先制を許し、そのまま敗戦に終わった。敗戦からも学びを得て、成長してきた彼らに1ミリの隙も無かった。空中戦はCBの横窪と西村が対応し、クロスボールを上げられるかギリギリの攻防は両SBの西矢と大串が対応。シュートを打ち込まれても山本が立ちはだかり、キャッチとパンチで跳ね返し続ける。
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一方で相手の守備陣を崩せずに苦しむ時間が続いた。現在リーグ最少失点の関西大、CBの髙橋、木邨のツインタワーに攻撃を刈り取られシュートまで展開できない。京産大の応援からも「4番(髙橋・関西大)うまいなぁ!」と声がかけられるほどだった。京産大の4番と関西大の4番は互いに4年次生、そしてガンバ大阪ユース出身。互いの意地がぶつかり合い、激しい攻防が繰り広げられる。

両者の固い守備、先に崩したのは京産大だった。前半29分に獲得したCK、左サイドのボールを西村が頭で押し込むもブロック、セカンドをPA右から西矢が打ち込むもセーブされる。チャンスを逃さず、諦めなかった京産大、最後はゴール前の混戦から西村が決めた。右人差し指を天高く掲げ、向かった先はベンチ。全員が集まり喜びを爆発させる。西村は今季2得点目、前期第4節の阪南大戦以来の得点。前回同様にCKから大きな仕事をこなしてみせた。両足にはテーピングが広範囲に巻かれている。リーグ戦も終盤、「あと数試合は何とか」と身体もボロボロの中、身体を張り続ける京産大のDFリーダーが大きく試合を動かした。
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前半の良い時間帯に先制することに成功した京産大。先制後も高い強度で相手の守備を跳ね返し続け、攻撃時には食野がピッチをコントロールし、追加点を奪いにかかる。全員が今まで以上の集中力を元に、今季最高のパフォーマンスを発揮し続け1-0の1点リードで試合を折り返した。

いつものように円陣を組み、互いにハイタッチしてから迎えた後半。耐えて、耐えて、耐えしのぐ45分になった。立ち上がりから連続でCKを3本与え、ポストにシュートが直撃する、肝を冷やして後半が始まった。終始、関西大ペース、クリアをしてもセカンドを拾われ攻撃につなげられる。そして、一度CKを与えると連続でCKやFKになり、セットプレーを受け続ける展開。一瞬の油断が失点につながる、緊迫した空気が流れる中、ピッチから聞こえて来るのは「全員でやるぞ!」という言葉だった。ポジション関係なく、まずはボールマンに着いて簡単にゴールに近づけない。クロスが上がると、前に大きいクリアでゴールから遠ざける。ギリギリの状況で相手の猛攻を防ぎ続け時間が過ぎていく。攻撃の時間はほぼ無く、ワンサイドゲームの形で試合は進む。
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何とか耐え続け、残り時間も短くなってきた中、35分にCBの佐藤を投入。前節同様に5バックで守備を固めると、45分にはMFの夏川を下げて、SBの楠瀬を投入。6枚のDFを配置し、今季初めて守備陣で守りを固める布陣となった。守備陣を固めながらも、山本が好セーブを連発。42分に山本と1対1という危機的状況を伸ばした左手でシュートの勢いを弱めると、覆いかぶさるようにしっかりとキャッチ。互いに声をかけ続け、油断は1ミリも無かった。その瞬間までは。
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表示されたロスタイムは5分。このときスコアは1-0でリードを保っていた。すなわち、優勝まであと5分。最後までFKとCKでセットプレーを与えるものの、しっかり守り抜き、王者へのカウントダウンが始まっていた。しかし、最後のワンプレー。守備が手薄になっているタイミングで浮き球をゴール前に送られると、GKと逆方向に打ち込まれた。1-1。倒れ込む山本、この時手元の時計では目安となる5分を指す頃。あとわずかに守り抜くことができなかった。試合再開後、長い笛が鳴りピッチに倒れ込む両チーム。まさに死闘、激闘の90分の結末は勝ち点1を分け合う結果に終わった。
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守れなった悔しさを吐き出すように、叫んだ横窪。立ち上がれない山本、西村。楠瀬に背中を支えられる西矢。限りなく負けに近い引き分けに終わったかのように、無念に包まれるチーム。わずかに届いた関西王者の栄冠はまた少し遠ざかった。関西1部リーグ、そう簡単に優勝できるリーグではない。

いよいよリーグ戦も次節で最終戦を迎える。優勝の可能性があるのは、京産大、関西大に絞られた。京産大は他チームの結果の影響に関わらず、最終節に対する関学大に引き分け以上で優勝が決まる。大一番はまだ続く。4年次生含む全学年、関学大に勝利したことがない。リーグ2連覇の関学大、今年の関西選手権の王者でもある。関西選手権終了後に食野は「関学に全部持って行かれるのは何としてでも阻止したい」と話した。動員試合、関西最終戦、唯一勝てていない関学大。舞台は揃った、最大の宿敵を打倒し新たな王者になれる最高の場所。最高の準備をチームは続ける。
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ここまで21試合、悔しさも喜びも学生リーグで存分に感じ続けてきた。最後の最後まで何かをかけて戦うことはこの4年間なかった。4年次生は関西最後の試合、チームに何を残すか、残せるのか。成長を続けてきたこのリーグ戦で全てを出し切り、90分後に新たな歴史を創り出す。大観衆が見つめる中、今季積み上げてきた京産大のサッカーで会場を魅了し、新たな一歩を踏み出す。関西最後、笑って終わろう。(福田明音)