第53回 関西学生サッカー選手権大会 決勝 同志社大戦(2024年6月30日)
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【スターティングメンバー】
GK 12 中村青(4年=京都橘高)
DF 2 楠瀬海(4年=高知高)
DF 33 逵村健斗(3年=三重高)
DF 5 横窪皇太(4年=金光大阪高)
DF 6 大串昇平(4年=ガンバ大阪ユース)
MF 7 石原央羅(4年=サガン鳥栖U-18)
MF 10 伊藤翼(2年=セレッソ大阪U-18)
MF 3 田代紘(2年=ヴィッセル神戸U-18)
MF 23 山村朔冬(1年=帝京長岡高)
FW 11 中田樹音(4年=岡山学芸館高)
FW 9 菅野翔斗(4年=サンフレッチェ広島ユース)
(フォーメーション 1-4-4-2)
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【サブメンバー】
GK 1 林憲太朗(4年=滝川第二高)
DF 25 西村想大(1年=近江高)
DF 4 小野成夢(2年=愛媛FC U-18)
MF 15 末谷誓梧(2年=セレッソ大阪U-18)
MF 8 城水晃太(4年=サンフレッチェ広島ユース)
MF 72 皿良立輝(1年=セレッソ大阪U-18)
FW 17 妹尾颯斗(2年=サンフレッチェ広島ユース)
FW 36 岩村匠馬(4年=東山高)
FW 46 小濵弘貴(3年=東海大福岡高)
【選手交代】
58分
IN 城水晃太 OUT 山村朔冬
IN 末谷誓梧 OUT 石原央羅
76分
IN 皿良立輝 OUT 中田樹音
【スコア】
京産大1-2同志社大
17分 得点 石原央羅 アシスト 中田樹音
【試合内容】
4000人近くの観衆が見守るヤンマースタジアム、ムッとするような湿気に風がなびく。決勝戦ならではの演出や放送がなされる中、選手らはピッチ内へと整列。各校の学歌が流れ、肩を組み元気よく歌い出す京産大イレブン。ベンチの選手や首脳陣らも笑顔で歌い上げた。
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京産大ボールでのキックオフで始まる。今季の戦い方でもある縦に速いサッカー、シンプルにボールを前線へ出していく。立ち上がり早々に、楠瀬からのパスを中田がワンタッチではたき、前方のスペースへ。裏の抜け出しに成功した石原が1vs1の状況をつくる。相手GK波多野崇史(同志社大=3年)の股下を狙うも、ビッグセーブに阻まれる。こぼれ球を菅野が反応するも、思うようにシュートを打てず、大きな決定機を逃した。対する同志社大はロングスローを武器に攻めの姿勢をみせる。すると12分、自陣の低い位置から繋ごうとした大串のところから、味方のサポートが間に合わずボールを失う。中山織斗(同志社大=2年)に対し、その後のDF陣のカバーも遅れてしまい、そのままゴール右隅へ流し込まれた。一瞬の隙を突かれ、重要な先制点を許す展開に。その後も背後のスペースを狙われるも、横窪を中心としたライン管理で抜け出しは許さない。早めに追いつきたい京産大は17分、大串がワンタッチで一気に前線の菅野へ。収めたボールをサポートに入った中田が左サイドの石原へ展開。ボールを受けた石原は縦に仕掛け、DFをかわすと角度のないところから強く左足を振り抜いた。ボールはキーパーの左足を弾くも勢いが勝り、ゴールイン。スタンドに駆けつけた仲間たちに向け、拳を上げ、まだまだこれからだと鼓舞する石原。「前半から足つるつもりで、走りきろうっていう気持ちだった」と、強みであるスピードを活かし、嫌な流れを止める同点弾をみせた。
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試合が動き、両チーム前から積極的な守備でボールを奪いにかかる。21分、ルーズボールを拾った楠瀬が、広大なスペースが空いていた右サイドを全力で駆け上がり、アーリークロスをあげると、中田が左足でボレーシュート。キーパーの正面を突いたが、カウンターから1つ良い形を作りだした。26分にも、左サイドから形をつくる。菅野が潰れ、伊藤が前線へスルーパス。反応した石原が相手DFを追い越すも、ここはGK波多野が見事な判断力で、素早く飛び出し、クリアされた。しかしその後は相手に翻弄される時間が増え始める。5バックの固い守備から、先制点をあげた中山を中心に嫌らしい攻撃をみせる同志社大。前半終了間際にはミドルシュートからヒヤリとしたピンチもみられた。
自分たちの戦いができない中でも1-1の同点でハーフタイムへ。この結果をポジティブに捉え、巻き返しを図りたい後半。しかし再開直後のFKでピンチを迎える。鹿取勇斗(同志社大=3年)の精度の高いクロスに対し、GK中村が右足で反応し、右手で外に掻き出した。51分、高い位置で奪い、中田がPA内へ仕掛け倒されるも、ノーファウルの判定。
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55分には、左サイドの鹿取の斜めのクロスからわずかにシュートにはならなかったものの、決定機をつくられる。ピンチの後にはチャンスあり。56分、右サイドの大串からサイドチェンジしたボールをPA内で見事に収めた菅野。シュートチャンスが訪れたが、ここもGK波多野の壁が立ちはだかる。すると70分、田代が相手と競り合ったところでハンドを犯してしまい、FKを与えてしまう。キッカーは高い精度を誇る鹿取。GK中村はファーサイドを警戒し、左寄りにポジションを置いた。1つ呼吸を置き放たれたボールは、京産大の壁の右上を巻き、ネットへ吸い込まれた。中村の手が届かないコースに見事に決めきった同志社大、貴重な勝ち越しゴールで1-2と再びリードを許す展開となった。このまま消化不良で終わりたくない京産大は、皿良を投入し、4-2-3-1に並びも変更。より攻撃的な布陣で同点を狙うが、5バックでアグレッシブに守る相手に苦戦する。76分にも3点目となる追加点が入ったかと思われたが、オフサイドの判定で、望みがつながった。サイドからの攻撃でこじ開けようとするも、最後までチャンスらしいチャンスをつくれず、1-2で試合終了。チームの心臓部であり、背番号10を背負う伊藤は、「自分たちがやりたいサッカーというのが、試合を通してできずに終わってしまったのが悔しい」と口にした。「(チャンスの)分母をもっと増やしたかった」と、話すのは指揮官だ。後半のシュート本数も0と完璧に封じ込められ、決定機さえつくることができなかった。
試合後には表彰式が行われた。初の関西選手権制覇を目標に決勝まで勝ち上がってきた選手たちに笑顔はなかった。それでも39大会ぶりの総理大臣杯出場を決め、50大会ぶり2度目の準優勝までたどり着いたことは、京産大の歴史を大きく動かしたと言って間違いない。「5連勝しないと優勝がない」(吉川監督)と、優勝する難しさをあらためて痛感した決勝戦となったが、昨季のインカレ準優勝、今季の天皇杯出場を含め、トーナメントで勝ち上がるチームへと変貌しつつある。
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悔しい準優勝となったが、「この敗戦を引きずっててもしょうがない」(菅野)と、キャプテンは早くも次のリーグ戦を見据えている。学生リーグ連覇に向け、前期残り3試合を勝ち点9でくぐり抜けられるのか、7月は夏のホーム神山3連戦が控えている。
【試合後のインタビュー】
主将・菅野翔斗選手
ー試合を振り返って
チーム的には自分たちのやりたいことはできなかったかなっていう試合だった。
ーチャンスを逃し、失点
ああいうチャンスを逃した後にはピンチがあると思うし、それに関しては決めれない試合もあると思うけど、その中で自分たちのサッカーができなかったっていうのは、シュートだけじゃなくて、チームとしてのまだ弱さがあるかなと思います。
ーハーフタイムでの指示
1人1人の戦術どうこうじゃなくて、気持ちの部分とかが足りないって吉川さんからは言ってもらって、自分らもそれはすごい感じてて。戦術でどうするかってよりかは、1人1人の気持ちの部分が全然足りてなかったっていうのを自分たちの中でも共有して、もっとやろうっていうので後半入りました。
ーチャンスをつくれず
相手も自分らのやり方を研究してきた中で、それを上回るクオリティだったり攻撃の形っていうのを出せなかったかなと思います。
ーよりマークされるチームに
自分たち1人1人のクオリティもそうですけど、それだけじゃ上回れない相手だったりも出てくると思うんで、チーム力だったりっていうので、勝っていかないといけないと思います。
ーリーグ戦の神山3連戦に向けて
もうこの敗戦を引きずっててもしょうがないし、インカレ出るっていうのもそうやけど、関西連覇するっていう自分らの目標がある中で、この3連戦っていうのは神山、自分たちのホームでできるので、1試合も落とせない試合だと思います。
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石原央羅選手
ー試合を振り返って
前半なかなか自分たちの形っていうのを出せなくて、球際だったり、セカンドボールだったり、そういうのも拾われてたんで、ハーフタイムにもっとやらなあかんっていうのは、全員で話して後半挑んだんですけど、1点やられて取り返せない形で試合が終わってしまった。
ー得点シーンを振り返って
そこで攻撃の選手は決めきれないといけないと思うし、ほんとに前半から足つるつもりで、走りきろうっていう気持ちでやってて、2本目樹音からああいう形で良いボールが入ってきて、相手を振り抜いてシュート打とうと思ってたんで、それが結果入って良かったなと思います。
ーハーフタイムの雰囲気
こんなんじゃまだまだ足りひんぞっていうことは言われてて。俺らも自分たちでこのままじゃダメっていうことはわかってたんで、少し修正できたとは思うんですけど、まだまだ隙やったり、半年、キツい練習とか色々やってきたんですけど、まだまだ自分たちには隙とか甘さがあるっていうのはわかったんで、 それをあと半年で修正して、総理大臣杯やったり、リーグ戦、インカレ、また切り替えてやっていきたいと思います。
ー目の前のリーグ戦に向けて
準優勝という形で終わってしまったんですけど、これは今の自分たちの実力だと思うし、また切り替えて、週明けからみんながいい競争して、3連戦勝ち点9取れるように頑張りたいと思います。
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伊藤翼選手
ー試合を振り返って
自分たちがやりたいサッカーというのが、試合を通してできずに終わってしまったのが悔しいです。シュート本数で言っても後半0本って話があったし、ゴール前まで行くシーンも今日は全然なかったし、自分たちのしたい縦に速いサッカーっていうのもできなかったかなと思います。
ーハーフタイムでのチーム
こんなんじゃあかんっていう話になったし、自分たち11人出てる選手がもっとピッチでやらないといけないっていう、もっとやろうっていうのがありました。
ー関西選手権を振り返って
大体大にリーグ戦で負けてからは、関西選手権このままじゃあかんっていう中で入って決勝までこれたけど、決勝でもこういう雰囲気の中でもできる力っていうのをもっとつけていかないといけないなと思います。
ー前期残る3節に向けて
3連戦全部勝って勝ち点9取れたらデカいと思うし、去年はそれが神山でできたし。だから自分たちがずっと積み上げてきたものを、出せるようにやっていきたいと思います。
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吉川監督
ー決勝戦を終えて
昨日の試合前、前日練習でも言ったんですけど、今日の結果が準優勝だろうが優勝だろうが、また明日、7月入ってから歩みを進めて、また結果を残し続けなければいけない、努力しないといけないってことは言ってたので、本当にこうやって準優勝にはなったんですけど、しっかりと切り替えて、次のゲームに向けて運用する、成長に向けて自分たちが何ができるのか、何が足りなかったのかを分析しながら進んでいくことが、1番大事かなっていう風に思います。
ー色々なことを試したが、上手くいかなかった
まさにその通りで、選手たち4回生中心に今日のチームの評価、自己採点してっていう話、何点やった?っていう話をしたら、20点や30点、40点やっていう話を言ってたんですけど、それも自分たちの力で、この決勝っていう舞台で、100点出せるのか、90点出せるのか、20点とか30点で終わるのかっていうところもチームの力だと思うので、そういったところも含めて、こういう舞台でしっかりと5連勝しないと優勝がないっていう、大臣杯行っても一緒だと思うんで、5連勝するっていう難しさと、どんなゲームでも自分たちの最低限の力を出すっていうところが、1番今日は足りなかったと思います。
ー苦しい中で得点シーンも
でも分母がちょっと少なかったなっていうところで、シュート数は90分通して4本っていう形なので、リーグ戦通しても1番少なかったスタッツになってるので、もっともっと分母を増やして得点を取るっていうところが必要だったかなと思う。チャンスで得点決めれる、決めれないっていうよりも、分母をもっと増やしたかったと思います。
ー直接FKで勝ち越しを許した
前日のセットプレー練習で言うと、かなり集中してやれてたので、前日の準備が悪かったからセットプレーで失点したっていうよりも、本当に自分たちの準備は、やるべきことをやったっていう中で、でも足りなかったことがあるよなっていうところが、そのフリーキックの1個のシーンだけじゃなくて、じゃあその前に紘がハンド取られたっていうところに至るまでのプレーがどうだったのか、そのエリアまで簡単に侵入されてたのが、どうだったのかっていうことを考えると、突き詰める部分はまだまだあるのかなと思います。
ー最後は守勢に入った相手に苦戦
自分たちの最後の10分、15分を5バックでした時には、ある程度やられないなっていう形もあるので、相手も一緒で、入ってくるのは外からのクロスボールってなった時に、やっぱ先制を許すという、2回先行されたっていうのが、ゲームプラン的にはすごくしんどかったなと思います。
ーGK中村選手が好セーブ
青が活躍するってことは、多少なりとも崩されてるとか、そういったゾーンに簡単にボールが入り込んでるっていうところだと思うんで。青のセーブっていうところはあるんですけど、それまでのところでもっともっと防げるシーンとか、それは前半からもそうなんですけど、ハーフタイムにも、自分たちが色気づいたプレーをするんじゃなくて、もっとやるべきことにずっと積み重ねていくっていうことが大事だっていう話をしたので、やるべきことを積み重ねるっていう作業がちょっと抜けてきたかなと思います。
ー2枚の交代枠を残した
4-2-3-1で岩村を入れようかなと思って考えてたんですけども、少しずつ翔斗、立輝のところで、ラストパス1本通ったらみたいなシーンも出てきそうだったので、翔斗の一発にかけたっていうところがあります。
ーリーグ戦に向けて
長いシーズン通したら、悔しい負けとか嬉しい勝ちとかたくさんあると思うんですけど、しっかりとこれを糧にして、この準優勝、決勝で勝てなかったのがリーグ戦、前期の最後3試合に生きたと、振り返れるように7月からまた頑張っていきたいなと思います。
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【取材:細井雅貴】